研究実績の概要 |
本研究の実績は,下記の2点に集約される。第一に,投稿論文が採用にいたったことである。この学会誌(日本語教育学会学会誌『日本語教育』)は世界各国の日本語教育関係の研究者が数万におよぶ投稿をおこなうなか査読が厳しいと言われており,採択率も極めて低い。本研究の代表者(中西久実子)は本研究費の助成を受けてこの査読を通過し,採択にいたった。中西久実子 (2014)「「名詞+だけだ」が不自然になる原因―「弟は10歳だけだ」はなぜ不自然なのか―」『日本語教育』159号,pp.17-29,日本語教育学会.この論文の要旨は次のとおりである。日本語学習者は「弟は10歳だけだ」など不自然な「だけだ」を多用するという問題があった。先行研究ではこのような「だけだ」は質を規定する名詞述語に接続すると不自然になるとされていた。これに対して,本研究では「だけだ」が質を規定する名詞述語に接続しても不自然にならない反例があることを指摘し,「だけだ」が不自然になる原因を解明した功績は大きい。本研究では,上記の論文でとりたて助詞「だけ」による強調とぼかしのメカニズムを明らかにしている。さらに,「だけだ」の英語訳「just」についても研究発表をおこない,日英語の強調とぼかしの語用論的メカニズムを明らかにした。これが本研究の第二の成果となる。日本語とりたて表現の強調とぼかしのメカニズムを英語などほかの言語で検証し,それを国際的な学会,論文において英語で発表できたことは研究費の助成を受けてこそ実現できた成果である。
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