• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

重層的パ-スペクトの組織化と活動動詞「スル」の普遍的意味特性に関する意味論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 25370447
研究機関同志社大学

研究代表者

山森 良枝 (松井良枝)  同志社大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (70252814)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワードスル / パースペクテイブ・シフト / 命題概念 / ガーデン・パス文 / 未来時制
研究実績の概要

本研究は、多様な環境に生起する「スル」のふるまいを、多値論理的な文脈に据えて、調査・分析する作業を通じて、その多様な用法を支える意味論的根拠を明らかにすることを目的とするものである。そのために、2015年度は2014年度に引き続き、ガ-デンパス文で「スル」が(「シタ」に比べて)高い容認性を示す現象が、異なるパースペクテイブでは異なる真理値をとる多値的な命題-命題概念ーを表示するという「スル」の論理特性と密接に関係しているとの立場に立脚して、「スル」がガ-デンパス効果を減少させるメカニズムについて具体的なモデルを提出した。
また、2015年度は、「スル」および「スル+モーダル」により表示される未来事象の分析に着手した。「明日、雨が降るだろう」のように、通言語的にみて、未来事象はしばしばモーダルを伴って表示される。そのため、時制よりもモダリテイに関わる現象として捉えられることがある。日本語は、英語のwillのように未来に特化した形式を持たず、時制形式として「スル」を使用する。このため、未来事象を表す「スル」においても、時制とモーダルのどちらのカテゴリーに属する形式であるかが問題になる。
未来事象は真偽の確定しない命題である。この点に着目すると、「スル」の命題概念を表す論理特性が未来の読みの構築に重要な役割を果たすとみなし得る。しかし、これだけで「スル」が時制かモーダルかを決定することはできない。どちらの可能性も依然としてあり得る。そこで、命題概念から派生する、当該命題と対比関係にある異次元のパースペクテイブ集合の伴立という「スル」のもう一つの特性を踏まえると、未来事象を表示する「スル」がモダリテイの形成に関わることをより強く予測することができるようになる。今後は、この予測が実際に正しいものであるかどうかを確証する必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

基盤研究(C)25370447の交付を受けて昨年度までに得た本研究課題に関わる研究成果は、概ね、平成26年度・研究公開促進費265079の交付を得て『パースペクティブ・シフトと混合話法』として上梓することができた。最終年度を待たずしての刊行は、最終年度に研究成果を刊行するとした当初の研究計画を上回る進展として評価することができる。
ただし、本研究が対象とする、ガ-デンパス文で「スル」が「シタ」よりも高い容認性を示す現象や、「スル」が未来事象を表示する現象についての論考は、上記図書に所収されていない。ガ-デンパス効果については、例えば4th European Conference on Cognitive Science(Torino, Italy)などで研究発表の機会を得た。しかし、未来事象の表示に関する現象は、先行研究の検証など、予備調査の段階に留まっており、本格的な研究の開始は残された課題である。

今後の研究の推進方策

未来事象の表示は、通言語的にみて、時制とモーダルの2つの領域にまたがる現象として捉えられる。そのため、従来の研究では、時制とモーダルのどちらに属する現象と考えるべきかについての議論がなされてきた。しかし、意見の一致は見られていない。日本語には、未来に特化した形式が存在せず、未来の事象は「スル」あるいは、「スル+モーダル」という形で表示される。 本研究においては、ここまでの研究で明らかにした、真偽の定まらない命題概念を表示する、という「スル」の論理特性が、モーダルな意味の構築にどのように関係しているのかを考察してきた。今後は、特定の未来形を有さないという日本語の特性に着目しながら、条件文などの研究結果とも比較しつつ、未来事象の表示がモダリテイに属する現象として捉え得る可能性について検証して行く予定である。

次年度使用額が生じた理由

物品の購入額について、当初予定額よりも770円安価に購入することができたため。

次年度使用額の使用計画

2016年度の物品購入費に充てる予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [雑誌論文] 「中国語の結果複合動詞について―日本語の結果複合動詞との対照から―」2016

    • 著者名/発表者名
      山森良枝
    • 雑誌名

      『GR―同志社大学グローバル地域文化学会・紀要―』

      巻: 1 ページ: 69-96

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 「前提の投射におけるleft-right asymmetryと「Pかもしれない」について」2015

    • 著者名/発表者名
      山森良枝
    • 雑誌名

      『第32回日本認知科学会大会発表論文集』

      巻: 1 ページ: 670-679

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] “The Effect of Present Activity Verbs on Processing Structural Ambiguity in Japanese Garden-path Sentences”2015

    • 著者名/発表者名
      Yoshie Yamamori
    • 雑誌名

      Gabriella Airenti, Bruno G. Bara and Guiulio Sandini (eds) Proceedings of the EuroAsianPacific Joint Conference on Cognitive Science

      巻: 1 ページ: 526-531

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] “The Effect of Present Activity Verbs on Processing Structural Ambiguity in Japanese Garden-path Sentences”2015

    • 著者名/発表者名
      Yoshie Yamamori
    • 学会等名
      EuroAsianPacific Joint Conference on Cognitive Science (the 4th European Conference on Cognitive Science, 11th International Conference on Cognitive Science)
    • 発表場所
      University of Torino
    • 年月日
      2015-09-26
    • 国際学会
  • [学会発表] 「前提の投射におけるleft-right asymmetryと「Pかもしれない」について」2015

    • 著者名/発表者名
      山森良枝
    • 学会等名
      第32回日本認知科学会
    • 発表場所
      千葉大学
    • 年月日
      2015-09-20
  • [学会・シンポジウム開催] The 27th European Summer School of Logic, Language and Information2015

    • 発表場所
      Universitat Pompeu Fabra, Barcelona
    • 年月日
      2015-08-03 – 2015-08-14

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi