研究実績の概要 |
今年度は、異なる世界における時空間的遍在を可能にする「スル」の普遍的意味特性をあぶりだすべく研究を進めた。具体的には、Dahl(1975)によって提出されたgeneric tenseという概念を適用し、generic tenseの中心的な特性である時間的なunboundednessを基準に、「スル」のふるまいを分析し、「スル」が示す多様なふるまいのメカニズムを解明するための研究を進めた。以下の(1)(2)は、その具体的成果である。(1)「状態性述語におけるル形とタ形の分布と意味的制約」In 9th International Conference on Practical Linguistics of Japanese (ICPJL) Conference Handbook. (2016.6) および (2) 「(Non)genericityとテンスの形式」『第33回日本認知科学会大会発表論文集』:pp.534-541. (2016.9) また、ここまでの研究に基づいて「スル」が多値論的論理特性を有することを主張してきた。「スル」を主動詞とする文では、「シタ」に比べて、いわゆるガ-デンパス効果が低下することが知られているが、「スル」の多値論的特性がガ-デンパス効果の低下に本質的に関係していることを明らかにした。以下の(3)はその具体的成果である。(3) Effect of Present Activity Verbs on Processing Structural Ambiguity in Japanese Garden-path Sentences”, In Journal of Cognitive Science 17-3: pp.469-497. (2016.10)
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