研究実績の概要 |
日本語の母語話者を実験参加者とし、実験に参加した順に以下の4つの異なる訓練を受けるグループ,すなわち 1, 母音の同定訓練を受けるグループ、2, 母音の弁別訓練を受けるグループ、3, 鼻音の同定訓練を受けるグループ、4, 鼻音の弁別訓練を受けるグループに分けた。 母音の同定に関しては、母音の同定訓練を受けたグループだけが他のグループよりも有意な伸びを示した。訓練では、どのグループも同じ音声刺激に接していたが、母音同定の正答率を上げるには、母音同定訓練を課す必要があり、弁別訓練による同定の正答率への波及効果及び鼻音に注意して行われた訓練の波及効果は見られなかった。 母音の弁別に関しては、どのグループも訓練前と訓練後に有意な正答率の変化が見られなかった。 母音の実験結果とは対照的に、鼻音の同定と弁別においては、訓練で鼻音に注意を向けていたグループの方が大きな伸びを示したものの、母音に注意を向けていたグループも小さいながら伸びを示し、グループ間の伸びに有意な差はなかった。このことは、訓練中に鼻音に注意を向けていなくても鼻音を含んだ音声刺激に触れることで鼻音の音声的な違いに敏感になることを示していて、母音の知覚訓練の波及効果が認められる結果となった。 母音と鼻音の実験結果が異なることについては、更に研究を続ける必要があるが、ひとつの要因として考えられるのは鼻音は/m/, /n/, /ng/の3つしか選択肢がなく各鼻音特定し易いのに対して、母音の実験では7つの母音を使用していて、弁別実験ではどの母音の組み合わせが含まれるかを伝えていなかったため、音声的なレベルで弁別ができても各試行の母音を特定できないままであったことが考えられる。
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