研究課題/領域番号 |
25370452
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
上野 善道 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・構造研究系, 客員教授 (50011375)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アクセント / 奄美方言 / 喜界島方言 / 徳之島方言 / 与論方言 / 与那国方言 / 式保存法則 / 外来語 |
研究概要 |
今期は,琉球方言を中心に調査研究を行ない,その結果の整理・報告に重点を置いた。具体的には奄美諸方言,中でも喜界島方言,徳之島方言,与論方言を主たる対象とした。 1 喜界島方言では,調査を一通り終えた中南部地点の報告を2本公表し,さらに1本も校了となっている。その報告はさらに続く予定である。現在は,その重点を北部の小野津,志戸桶,佐手久の3集落に移して調査を進めており,そのうち公刊する予定である。 2 徳之島は天城町浅間方言を精査し,従来報告のなかった外来語と複合語のアクセントを重点的に聞いた。調査データは入力を終えている。特に興味深いのが複合語アクセント規則で,伝統的な単語と見られる和語の複合語では前部要素の式保存法則に例外が多々あるのに対して,「北海道新聞,青森県,岩手放送,東京ガス」などの地名を前部要素とする生産的な複合語には式保存法則が完全に当てはまる,という興味深い現象が観察された。この違いをどのように位置付けるかは,今後の課題である。 3 与論方言は,通説とは異なり,全集落が多型アクセントであることを明らかにした。その中の麦屋東区方言では,徳之島浅間方言と同様,地名複合語にはきれいな式保存法則が当てはまるのに対し,伝統的と見られる複合語には例外が多いという現象があり,これらの統一的な解釈とともに,他の諸地域における実態も明らかにすることが重要な課題となった。麦屋東区方言は報告論文を公刊し,残りの地点についても続報を予定している。 4 与那国方言の3型アクセントにおいても,伝統的と見られる複合語では前部要素の式保存が見られないことを示す報告をした。ただし,地名を前部要素とする生産的な複合語でどうなるかは興味が引かれるが,長年お願いしてきた高齢の話者の体調が優れず,調査は困難な状況が続いていて,未だに果たせていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
喜界島方言と与論方言では,当初の計画以上の進展を見せている。徳之島方言は,予想どおりの進み具合である。 一方で,予定していた与那国方言は,高齢の話者の体調が思わしくなく,調査ができない状態が続いており,今後,それが可能になるかどうかも不明である。 また,本土側で予定していた伊吹島方言は,調査者側の多忙が原因で,調査が次年度に先送りになった。ただし,話者の都合とは無関係なので,次年度は調査ができるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,奄美方言の3島の調査は継続するとともに,徳之島の中では天城町浅間の周辺の集落に,そして新たに,奄美大島にまで調査範囲を広げる。与那国方言については,話者次第であり,今のところは何とも言えない。琉球方言の調査項目は,かつての調査の補充とともに,各地で試みている外来語のアクセントと,地名を中心とする生産的な複合語のアクセントに焦点を当てる。 本土では,伊吹島方言の調査を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査時期によってシルバー航空運賃に違いが出たために3万円弱の余りが出たが,その額では他の調査に出るには不足していたので次年度に回すことにした。 3万円弱だけなので,次年度の調査は特別の変更なく進めることが可能である。
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