研究課題/領域番号 |
25370454
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松江 崇 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (90344530)
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研究分担者 |
今井 俊彦 防衛大学校(総合教育学群), 外国語教育室, 講師 (40409553)
山田 敦士 日本医療大学, 保健医療学部, 准教授 (20609094)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中古漢語 / 漢語語彙の複音節化 / “V給” / パラウク・ワ語 / 音節の弱化現象 |
研究実績の概要 |
松江崇は、中古漢語の〈のぞむ〉という意味を表す動詞の体系、および疑問代詞体系を題材として、漢語語彙の複音節化が漸次的に進行する際、単音節語と複音節語とが共時的には「共存」しつつ、通時的には「競争」していくという「共存/競争」現象が一定期間持続すること、そして「共存」の過程では複音節語の生起がしばしば特定の文法的/機能的条件のもとでのみ可能であること、「競争」の過程では時間の推移に従って複音節語の生起する文法的/機能的条件が拡大するという現象がみられることを指摘した。さらに、漢語の複音節化研究には、中古漢語の主要資料たる早期漢訳仏典の使用が重要であるが、早期漢訳仏典の言語を中心とする仏教文献言語に関する国際シンポジウムを北海道大学で開催した。 今井俊彦は、現代漢語において、主に授与を表す動詞の直後に置かれる“給”が、情報伝達を表す動詞とも共起する現象について、多くの用例を調査しつつ、動詞の前に置かれる前置詞の“給”など類似する成分との比較を行った結果、情報伝達動詞はさらにいくつかに分類できることを指摘し、そうすることで“給”の生起条件についても相補分布をなすことを明らかにした。 山田敦士は、パラウク・ワ語(モン・クメール語族)を主な対象に、次の三点に関する研究活動をおこなった。すなわち1.共時的な派生法の整理、2.多音節単純語の通時的解釈、3.音節の弱化現象に関する音響音声学的分析である。1.および2.の考察により、多音節単純語の通時的方向性に関する一つの仮説を提示することができた。その中で、音節の弱化という音声現象が重要な視点であることが示唆されたため、周辺言語との比較対照を念頭に、音節の弱化現象に対する音響音声学的分析にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中古漢語やパラウク・ワ語については、語彙の複音節化のメカニズムの検討という理論面での議論にまで着手し得たことなど、研究代表者・分担者それぞれの専門分野における研究は、着実に進展しつつあると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
漢語史における複音節化現象と現代漢語の複音節語、或いは漢語史における複音節化現象とパラウク・ワ語における複音節化現象とを有機的に結びつけた議論は十分には進展していない。今後は、研究代表者・分担者それぞれの専門分野における研究を、有機的に結びつけた議論を展開していくことが必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は2万円強であり、経費における割合は大きくない。当初どおりの計画に従って執行した結果、物品購入費・旅費に関する見込みの費用と実際の費用との差額によって生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のように次年度使用額の経費における割合は大きくはなく、当初の使用計画を変更する必要はないと考える。
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