東京外国語大学付属図書館、ハワイ大学ハミルトン図書館においてこれまでに収集し切れなかったポリネシア諸語関連資料の拡充を行った。具体的にはポリネシア諸語の機能語の歴史的な変遷に関連するデータと、直接的に小辞に関するデータではないが小辞の分析に間接的に関係しそうな文法項目についての関連資料の拡充を行った。 過去3年間に渡り、ポリネシア諸語内でも異なる下位グループに属するサモア語、タヒチ語、ハワイ語に焦点を置き、それぞれ名詞的小辞、動詞的小辞、一般的小辞について、元々同一起源と考えらえるものが、現在の各言語間において、どのようなものについて機能的な差異が見だされるのか、について分析した。最終年度は、それらの三つの分析結果を集約し、現代の各言語で見られる同一起源の小辞の様々な機能的な差異にはどのようなものがあるのか、また、差異の現れ方について、どのような傾向性が見られるのか、について分析を行った。 その結果、まず、同一起源の小辞に機能的な差異が見られる場合は大きく二つの場合があることが示された。一つは、元々の機能がそこから派生する別の機能へと推移していった結果として言語間でずれが生じる場合、もう一つは、元々二つの別個の小辞が担っていた機能が一つの小辞に統合されたことによりある言語では二つの小辞を用いて表すものが別の言語では一つの形式のみで表される場合である。更に後者には二種類あり、句構造の中で同一のポジションを占める(同じ語類に属する)二つの小辞の機能が一つに統合する場合、句構造の中で異なるポジション(通常は隣接するポジション)を占める(異なる語類に属する)二つの小辞の機能が一つの小辞に統合する場合がある。前者は多義語的な小辞をうみだすものであり、後者は二つの語類の機能的な融合形である。この研究成果の中核となる部分については既に研究会で口頭発表し、現在、論文として投稿準備中である。
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