研究実績の概要 |
本研究の主な目的の一つは、24年度までの科研費で構築した、地理情報システムによるデジタル世界言語地図の研究をさらに進めて、しばしば基本語順と相補的な関係にあり、人類言語の根幹に関わるきわめて重要な特徴である格標示について、可能な限り世界の多くの言語からデータを収集し、最大規模の格標示データベースを構築することであった。従来の格標示研究では、地理的な分布に関する研究は少なく、またせいぜい数百言語のデータを基にした研究であった。 この種の研究では、世界諸言語からのデータ収集が、最も重要で多大な時間と労力を要する作業となる。そこで、特に25年度から26年度にかけて、他研究機関のものも含め、多くの記述書・研究書から格標示に関するデータを抽出し、1,800を超える言語から格標示データを収集することができた。 本研究のもう一つの目的は、収集した格標示データを、以前構築した地理情報システムによるデジタル世界言語地図に組み入れて、様々な検索、地図表現、分析を行うことを可能にすることであった。しかしながら、世界諸言語の言語名は、言語と方言の区別問題などもあり、しばしば多様な名称が存在することから、収集してきた格標示データの言語名とデジタル世界言語地図用のデータベースの言語名を照合、統合する必要があり、27年度は、特にそれらの作業を行って、デジタル世界言語地図に組み入れ可能な形のデータベースを作成した。 28年度は、これまで収集してきた格標示データの見直し、確認を行い、空白箇所を予測するSpatial Analystによる地図表現も含めて、種々の格標示をデジタル世界言語地図上に表現し、分析結果を著作にまとめることができた。 今後は、27年度から開始した科研費による比較表現研究を含め、さらに多くの言語情報をデジタル世界言語地図に組み入れ、言語地図を利用した研究をさらに進展させる計画である。
|