研究課題/領域番号 |
25370461
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
黒田 享 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00292491)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コーパス言語学 / 転換動詞 / ドイツ語史 / 古高ドイツ語 / 中高ドイツ語 / ドイツ語 / 語形成 / 形態論 |
研究概要 |
研究初年度につき、研究全体の基礎に関する部分に重点を置いた研究を行った。まず、各種の基本的文献資料を購入し、近年のドイツ語形態論研究・語彙論研究の研究成果を把握した。6月にはベルリン・フンボルト大学(ドイツ連邦共和国)で関連資料を調査し、最新の研究動向について現地の研究者と意見交換を行った。また、同大学を中心として構築されたReferenzkorpus Altdeutschについて詳細なレクチャーを受け、研究のために利用できることになった。 研究対象としては、25年度に名詞由来の転換動詞を調査し、26年度に形容詞由来の転換動詞を調査する計画であったが、年度前半に検討した結果、副詞などから由来する転換動詞をも視野に入れた方が研究がより充実すること、そして研究対象となる全ての転換動詞を一度に確定する方が研究全体のプログラム上効率が良いことが判明した。そこで、Rolf BergmannやAletta Leipoldの研究を踏まえて、いくつかの古高ドイツ語文芸作品と中高ドイツ語実用文書集Corpus der altdeutschen Orginalurkundenに現れる動詞から中世ドイツ語の転換動詞として認められる動詞を確定した。 その上で、これまでに研究代表者が蓄積したノウハウを生かしつつ、上記Referenzkorpus Altdeutschを援用しながら古高ドイツ語大規模テキストデータベースを構築し、名詞・形容詞由来の転換動詞の用例を網羅的に採集した。そしてそうした用例をデータベースにまとめ、転換動詞の形態・意味機能・統語機能 の相互関係を体系的に調査した。次年度は中高ドイツ語における転換動詞の用例データベースの構築を中心に研究を行う。 また、10月には海外2大学において招待講演を行い、現地の研究者と研究成果について意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の研究は中世ドイツ語の転換動詞の形態・意味機能・統語機能の相互関係についての基礎調査を行う計画であった。海外研究機関の援助も得て、古高ドイツ語・中高ドイツ語の転換動詞データベースの構築を進めることができた。研究当初に26年度分として計画していた調査の一部を25年度に行い、25年度分として計画していた調査の一部を26年度に行うことに変更したが、これはその手順に変更した方が計画全体の効率化につながるためである。また、26年度末には再び当初計画通りのスケジュールに戻る見込みであり、研究全体としてはほぼ計画通りの進捗であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では、25年度に名詞由来の転換動詞を調査し、26年度に形容詞由来の転換動詞を調査する計画であった。25年度前半に検討した結果、研究の充実のために副詞などから由来する転換動詞をも視野に入れることが望ましいこと、そして研究対象となる全ての転換動詞を前もって確定することが研究全体の順調な進捗につながることが判明した。そこで計画を変更し、25年度中にまず古高ドイツ語の転換動詞用例データベースを優先して完成させることにした。中高ドイツ語の転換動詞については調査対象となる語彙の確定も終えている。これに引き続いて26年度に中高ドイツ語の転換動詞用例データベースを完成させることにより、当初計画していた前半二カ年の研究が予定通り進むことになる。27年度以降の研究については現在のところ計画変更の予定はない。なお、25年度の段階で様々なインターネット上の研究資源が利用できることが判明したため、今後はそうした資源を有効に利用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
転換動詞の用例を網羅的に採集するため、研究対象とする転換動詞の確定を実施した。当初、中世ドイツ語の転換動詞を確定した後、それを検証して確定の精度を高めるために現代ドイツ語の転換動詞に関する最近の研究成果との比較を予定していた。しかし、当初26年度に実施する計画であった形容詞由来の転換動詞の確定を25年度に実施するように変更したため、この部分の作業については26年度に行うこととし、そのための資料購入に充てる計画であった予算を26年度に使用することにした。 26年度は25年度の研究を基礎に、中高ドイツ語の転換動詞の用例データベースを構築することを中心として研究を進めるが、このデータベースを活用して中世ドイツ語の名詞・形容詞・副詞由来の転換動詞の形態・意味機能・統語機能の相互関係を分析し、体系的に捉える(特に重点を置くのは接頭辞との関係、転換動詞タイプ、項構造である)。また、CD-ROM資料やインターネット上で利用できる各種資料を援用しつつ古高ドイツ語から中高ドイツ語へかけての変化も明らかにする(従来から共同研究を続けている海外の研究者と詳しく意見交換をすることも予定している)。こうした研究においては、25年度の入手を見合わせた現代ドイツ語形態論に関する基礎資料を導入し、ドイツ語形態論研究・語彙論研究の近年の研究成果を考慮して中世ドイツ語転換動詞用例データベースの充実をはかる。
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