研究課題/領域番号 |
25370465
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
梅谷 博之 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (60515815)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | モンゴル / 形態論 / クリティック / 小辞 |
研究実績の概要 |
本年度も,個々の「付属語」の記述を進めた。特に,「人称所属小辞」と呼ばれるいくつかの形式を扱った。先行研究のなかには,人称所属小辞の自立度が低いことを指摘するものもあれば,その自立度がある程度高いことを指摘するものもあり,記述が一致していない。こうした状況を踏まえ,詳しい調査を行ない現象を整理することを試みた。まず,母音調和の観点から観察を行なった。その際「人称所属小辞の母音が母音調和に従って音価を変えるか」という従来の研究にみられる視点に加えて,「人称所属小辞の直後に現れる要素の母音がどの音価をとるか」という視点も導入した。その結果,人称所属小辞が(少なくとも母音調和の観点からは)自立性を有していることが分かった。これと並行して,アクセントの観点からも観察を行なった。その結果,(上述の観察結果とは異なり)人称所属小辞がおおむね接辞と同じふるまいを示し,この点からは自立度が低いことが確認された(人称所属小辞のうちいくつかのものは,一音節語に後続する場合と二音節以上の語に後続する場合とで,アクセントに関するふるまいが異なることも分かった)。このように,母音調和とアクセントのどちらに着目するかによって異なる結果が出てくる。こうした特徴をもつ人称所属小辞をモンゴル語全体の中にどのように位置づけるべきかについて,今後考察を深める必要がある。 また本年度は,上述のような個別言語的な考察に加え,言語学全般に関わる問題についての考察も行なった。「付属語」とほぼ同義で用いられることが多い用語に “clitic” がある。まず,両者の異同を整理する作業を行なった。その上で先行研究を見直してみると,両者を同義で用いることによって不要な混乱が生じている事例があることが確認された。このように用語間の違いを整理することは,モンゴル語の「付属語」を通言語的な観点から論じるためにも有益であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モンゴル語の個々の付属語についての調査が進み,データが蓄積されてきた。また,用語を整理することを通じて,個別言語的な事象だけではなく言語学全般に関わる問題についても考察が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,個々の付属語についてデータを収集し特徴を記述する。これまでの研究により,個々の付属語の自立度の違いが明らかになってきたので,その全体像を整理する作業も行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内の用務ため,モンゴルでの調査のための日程を確保できなかった。そのため,旅費の支出額が当初の見込みより少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
可能であればモンゴルに比較的長期間滞在してデータ収集の効率を高める。また,国内外での学会等で成果発表を行なう予定である。
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