現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文型抽出基準については,項の不可欠性(ある必須項が文型特徴となりうるか)についての分析・検討はある程度なしえた。統辞構造の中核たる文型体系の基盤をより明確にするためにも文型抽出の他の基準についても検討する必要がある。例えば,当該述辞形の異なる記号内容の指標となる構成要素は文型特徴となりうるかどうか(Luc apprend1 la lecon - Luc apprend2 la lecon a Lea で a Lea は apprend2 の指標になる)。構成要素の配列(動詞文型の特徴項は動詞の右に来る),両立可能な特徴項(特に間接目的項:Luc herite de cela de ses parents)の数,等。 文型分析の動詞の実例コーパスの構成(Le Monde 紙 1994 年を基にして各動詞毎に実例 1000 例を収集したもの)と既存の分析・記述(Tresor,等の大規模辞書の記述)の整理も高頻度動詞についてはかなり進んでいる。 以上の文型の理論的問題の検討とコーパスの全体像把握のための作業に時間をかなり費やしたため,対象個別動詞の選択とその実例の具体的構文分析が遅れている。これまでに蓄積されている分析例(charger, planter, traiter, approcher, payer, faire, laisser, juger, 等の構文 )とは異なった直接目的他動詞文,間接目的他動詞文,代名動詞文,受動態文(これらの文型の各々には多くの下位クラスがあり,その各々に代表的動詞がある)の個別の分析とそれらの構文の相互関係の検討が遅れている。 更に,個別動詞の分析とは別に,均質コーパス(Le Monde 紙の社説に限る)の全テキストを対象とした文型分析(全般的にどのような文型がどのような頻度で出現するかの調査)も分析対象の一つであるが,これも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の遅れている点(特に他動詞直接目的・間接目的文と他文型との関連での個別動詞の具体例の分析)を進めながら,2014 年度の主対象である属詞文型と他文型との関係の分析を代表的動詞の具体例で実施する。直接目的他動詞文の一部の他動詞属詞文:N0-V-N1-[A/N](A:形容詞),自動詞属詞文:N0-V-[A/N]-,非動詞文:A,-N (Chauds,les marrons!); PrepN-,N(De cela,la revolution!),等,と他文型(特に動詞文文型)との関係が特に対象となる。 属詞と直接目的との違い(N0-V-Natt.1 - N0-V-Nobj.1(att:属詞,obj:目的項))は属詞とみなされる要素が文の統辞的中心,つまり,述辞であるか,動詞述辞の項の一つであるかを見極めるという意味で重要になる。また,他動詞属詞文(N0-V-N1-A2: Je trouve Luc gai)と自動詞属詞文(N0-V-A1: Luc est gai)との関係は,属詞文の根幹にコピュラ(etre)の潜在を想定するかどうかという意味で,これも属詞概念の定義に関連してくる。更に,間接目的属詞文(Je juge de cela comme important)の認定の是非(これは範列に形容詞を含まない項も属詞と認めうるかどうかの問題:間接目的の属詞はあまり取り扱われて来ていない)も属詞の定義に関係する。属詞機能の多くの実例による検証が必要である。 また,etre の属詞自動詞文と非動詞文との関係(Les marrons sont chauds! - Chauds,les marrons!)の解明(一部の非動詞文の根幹にコピュラの潜在を想定するべきかどうか)も,非動詞文の全文型体系の中での位置づけの観点から重要になる。 以上の問題を個別動詞の具体例の分析・検討によって明らかにしていくこと,そして,均質コーパスによる全テキストを対象とする文型分析の継続・補充が 2014 年度の目標となる。
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