研究課題/領域番号 |
25370471
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松澤 和宏 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (30219422)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 一般言語学 / 文献学 / 言語思想史 / 記号学 |
研究実績の概要 |
平成27( 2015)年度は、前年度に引き続きソシュール晩年の第三回講義の解読・校注・訳に取り組んだ。 第三回講義の第一部諸言語の後半の世界の主要語族の校注・訳は完了し、第二部言語も前半および後半の主要部分は完了した。残る箇所は第一部の前半部分および第二部の後半の一部であり、2016年度中に全て完了し、岩波書店よりソシュール著作集の第二回配本として刊行される予定である。予定よりも遅れた理由は、インド・ヨーロッパ語の調査および解釈の問われる箇所に関して複数の学生の聴講ノートを比較して訳注に反映させる作業に当初予想していた以上の時間と手間がかかったこと、さらに最新の研究成果を校注に反映させようと務めたことにある。 2015年4月にフランスの近代テクスト草稿研究所言語学グループで講演をし、11月には「ソシュール 徹底討議」が催され、現代言語学者3名との討議を行い、研究課題である『一般言語学講義』の成立過程について報告し、かつ第三回講義を元にした『一般言語学講義』が第三回講義をいかに書き換えているのか、主要な点に絞って明らかにした。この記録は 2016年9月に、ひつじ書房より『ソシュール 徹底討議 ソシュール文献学と現代言語学の対話』と題して刊行予定である。 2016年パリ(6月)とジュネーヴ(2017年1月)で催される『一般言語学講義』刊行100年記念国際シンポジウムの査読委員等を務め、かつ研究発表をも行う予定である。また2016年10月に東北大学で催される日本フランス語フランス文学会秋季大会でワークショップを催し、研究発表を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下の三つの理由により、第三回講義を 2015年度中に校注・訳を刊行することができなかった。、 (一)第一部後半の世界の主要語族をはじめ第一部の諸言語の各章に頻出するインド・ヨーロッパ諸語の調査検討に予定をはるかに上回る時間と手間がかかった。 (二)訳注の作業の一環として、複数の学生の聴講ノートを参照し、相互に比較して解釈する必要が生じたために、予定を倍する時間がかかってしまった。 (三)恣意性や価値論をめぐる最新の研究成果を批判的に摂取し、校注に反映させようと務めているが、そのためにはかなりの論文を読み、解釈上の問題を時間をかけて検討しなかければならなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成 28年度中に一般言語学講義第三回講義の校注・訳は完了し、刊行する予定である。当初の研究計画では、第一回講義や第二回講義の校注・訳も完成させる予定であったが、予想以上の手間と時間がかかってしまったために研究課題の全てを達成することは困難になってしまった。今後も引き続き残りの二つの一般言語学講義の校注・訳を実現し、ソシュール著作集(岩波書店)を完結するように努力するつもりである。第三回講義の校注・訳の作業の過程で新たに発見したことを、 2017年1月のジュネーヴ大学で催される国際シンポジウムでの研究発表として結実させる予定である。
|