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2013 年度 実施状況報告書

ルクセンブルク語地域変種の文章語での使用に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 25370472
研究種目

基盤研究(C)

研究機関愛知教育大学

研究代表者

田村 建一  愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90179896)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードルクセンブルク語 / ヴィルツ方言 / 文章語での方言使用 / ドイツ語方言学 / リプアリア方言
研究概要

本研究の目的である、ルクセンブルク語北部方言の文章語での使用に関する調査のため、2013年9月に二週間ルクセンブルクに滞在し、北部の二つの町で聴き取り調査を実施し、以下の成果を得た。
まずヴィルツでは、2人の方言話者(60歳代男性のW氏と70歳代男性のS氏)に対して聴き取り調査を行った。W氏からは、地域のお祭りや各種記念行事等に関わる1980年代からのパンフレットを何冊か提供され、そこに北部方言による文章がたくさんあることが確認できた。またS氏からは、ご自身の北部方言によるエッセイ(子ども時代の思い出)が掲載された書籍の情報を教えていただき、後に書店でそれを入手した。2人とも知人とのメールのやり取りでは方言を用いるとのことであり、特にS氏は報告者宛のメールでも主として北部方言を用いた。
ルクセンブルク最北端の町であるトロワヴィエルジュの方言話者(50歳代女性のM氏)とも事前に家族も含めた方言使用状況について訊いたうえで、聴き取り調査を行った。ただし、この時は知り合いも含めて一度に6人と会ったので、全員の方言使用状況を詳しく訊くことはできなかった。この調査では、若い人たちの何人かが学校時代の思い出を北部方言で書いている地域レベルの雑誌『クレルヴォー・カントン』を入手した。この資料の分析はまだ行っていない。
ヴィルツで入手した上記資料の一部と、現地調査後に入手したヴィルツ方言で書かれた戯曲Marco Schank “De Lederbarong”『なめし皮男爵』(2011年刊行)を分析した結果、報告者が以前分析した戯曲で用いられていた方言形がより徹底した形で用いられていることがわかった。この分析結果を、ルクセンブルク文学センターで入手したルクセンブルク語話者の方言意識に関する修士論文(2013年9月)の内容と関連づけてまとめた論文は、現在投稿中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

聴き取り調査を実施できたものの、当初希望していた年齢層や性のバランスのとれたインフォーマントの人数が確保できず、特にヴィルツに関しては高年齢層男性からしか聴き取りができておらず、この点が課題として残された。
ウェブ版日刊紙の投書欄における方言使用についても事前に調査することにしていたが、言語や教育に関わる記事に限定して少しデータを採ったところ、首尾一貫した方言使用の投書が見られなかったため、この調査は途中から行っていない。
しかし、現地調査によって得られた資料からは、ルクセンブルク北部地域では、意外にもIT機器によるニューメディアが登場する以前から文章語での方言使用の伝統があることがわかり、この種の資料をもっと探る必要性があることがわかった。
また、じっさいに使用される方言形については、最も顕著な特徴である-k- / -g- の挿入(例えば標準語Leit「人々」に対する北部方言Lektなど)についてメールで調査し、確認することができた。

今後の研究の推進方策

26年度も現地調査を実施し、以下の点について調査する。まず、ヴィルツ方言に関しては昨年、高年齢層男性からしか聴き取り調査を実施できておらず、また方言が使用される文書の書き手には今のところ高年齢層の者しか見られないので、若年層のインフォーマントを探し出し、文章語としての方言使用に関する調査を行いたいと考える。
また、昨年トロワヴィエルジュで入手した地域レベルの雑誌『クレルヴォー・カントン』やその他の地域文化を扱う雑誌について、ルクセンブルク文学センターでバックナンバーを調べ、方言が使用される文書がどの程度あるのか、あるとすればいつから使用されているのか、使用される方言形に統一性があるのか等の調査を行う。
昨年トロワヴィエルジュで会見したインフォーマントの一人(30歳代女性)は、勤務する小学校では、児童の保護者に向けて発行する行事案内等の文書で方言を使用すると述べていたが、実際に学校のHPにはそうした文書も掲載されている。そうした学校が果たしてどの程度あるのか、ほかにHPに方言を使用する施設があるのかどうかも調査する。
調査にあたっては、事前に昨年度に入手した資料の分析を通してヴィルツ方言とクレルヴォー方言との相違を明らかにしておく。

次年度の研究費の使用計画

ルクセンブルクの現地調査でお世話になったインフォーマントはすべて経済的にゆとりのある人たちであり、また事前に行ったメールでのやり取りから報告者との個人的な関係がある程度築かれたこともあり、予定していた謝金が不要となったため、未使用額が生じた。
26年度も引き続き現地調査を実施し、研究テーマに関連する図書を購入する。25年度と異なり、現地調査では若い世代のインフォーマントも探す予定であるので、場合により謝金も必要と考える。

研究成果

(1件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] ルクセンブルク語話者の方言意識と文章語での方言使用2014

    • 著者名/発表者名
      田村 建一
    • 雑誌名

      ドイツ文学研究

      巻: 46 ページ: 印刷中

    • 査読あり

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公開日: 2015-05-28  

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