1980年代以来、中国の改革開放と共に、中国語研究は世界各国で急速な発展を遂げ、多くの用語が新たに作り出された。また、伝統的な術語や一次資料に関しても、新発見資料やフィールド調査、研究の深化を背景として、定義の修正が必要になってきた。 また、多数の新しい用語が中国語圏で作り出されるのに応じて、個々の研究者がそれぞれに日本語の訳語を作りあげた結果、同一の原語に対して複数の訳語が作られ、ある用語が何を指しているのか専門家以外には分かりにくい場合も少なくない。中国語に関する論述において、日本語のどの用語を使うべきかの指針が完全には定まっていない状態である。言語の理論的研究や対照研究において中国語が参照される事例も増えている現在、中国語研究で用いられる標準的な用語を収集し、その定義について理解を共有し、次の段階の研究の基盤とする必要性は、高まっている。 本研究は、上記のような動向を踏まえ、第一に、中国語研究における重要な用語や常用の一次資料を約1200項目選定し、日本語・中国語・英語で対照できるようにした。第二に、上記の項目につき日本の中国語研究における最新の研究動向を反映させた標準的定義の作成を試み、それぞれ基本的な必読文献の注記を加えた。以上の全体の作業にあたっては、ひろく日本国内の中国語学研究者の協力を得ることができた。 研究協力者と共にとりまとめた成果のうちから、完成度の高い項目を選んで、平成28年度に『中国語学辞典初稿(第1分冊)』として総397ページの報告書を少部数印刷し、国内の関係研究者に配布して意見を求め、さらなる質的向上をめざしている。総量が当初の予期を上回る規模となったため、第1分冊に収めることができなかった原稿については、本研究実施後も引き続いて整理しつつあり、最終的に『中国語学辞典』として正式刊行を予定し、出版社との協議もすすんでいる。
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