研究課題/領域番号 |
25370478
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
大薗 正彦 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (10294357)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ドイツ語 / 基本語彙 / コーパス / 頻度 / 学習文法 |
研究概要 |
本研究は,過去のドイツ語研究の知見をもとに,現在利用可能なコーパスデータを活用し,使用頻度なども導入した,新たな,かつ日本人の本格的なドイツ語学習のためのドイツ語文法を構築することを最終的な目標としている。具体的には次の3点の個別目標を設定しているが,平成25年度はこのうち1.を中心に作業を進め,2.,3. についても若干の取り組みを行った。 1. 頻度に基づいた日本人学習者のための基本語彙5000の確定:コーパスに基づいた既存の頻度語彙リスト(4種類)を利用し,頻度に基づく語彙リスト(5000語)を作成し,学会発表を行った(論文印刷中)。続いて,(1) この頻度語彙リストと一般に広く知られている教育語彙リストの比較を行い,さらに (2) 日本人を念頭に置いた独自調査に基づく語彙リストを作成し,頻度語彙リストとの比較を行った。これについても学会発表を行った(論文投稿中)。頻度語彙リストの5000語のうち,教育語彙リストと共通するのは約3000語である。今後は,独自調査の結果も踏まえ,各リストの結果を合成していくという作業に進むことになる。 2. 基本語彙リスト5000とその頻度調査に基づく初級・中級文法の再検討及び新たな文法記述:基本語彙5000の確定が当初の予定より遅れているが,並行して文法項目の検討を進めた。成果として文法教材をまとめた。 3. 日本語と表現様式が異なるドイツ語表現に関する頻度調査及びその体系的記述:このテーマに関して2本の口頭発表を行い,特に空間表現に関し,日独の小説を用いた小規模な頻度調査を行った(論文投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度である平成25年度においては,基本語彙(5000語)を選定した後,基本語彙内での意味体系記述など,各種頻度調査に入る予定であった。しかしながら,最終調整を済ませた形の5000語の確定が完全には終了していない。そのため「やや遅れている」と評価した。やや遅れている理由としては,各種語彙リストの見出し語の立て方(レマ化)の基準がばらばらであるため,それを手作業でそろえなければならなかったこと,さらに頻度語彙リストと教育語彙リストのずれが予想以上に大きかったということがある。また,研究代表者が年度の最初に所属先を変わったこと,新たな所属先の建物が改修工事に入ったことにより,適切な研究環境が得られず,従って当初予定していたデータ整理などの研究補助(学生アルバイト)の協力も得られなかったことなどが進行に影響した。しかしながら,年度内に4本の口頭発表を行うなど,エフォートに関しては当初計画以上であったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
まずは基本語彙5000の最終選定を終わらせることが最優先課題となる。頻度調査や各種語彙リスト間の比較は終わっているので,とりわけ教育語彙リストにおける重要語との調整,日本人のドイツ語使用という観点からの調整が主要課題である。その後,各種調査に入る。基本語以内での調査だけで済むものと,コーパス調査が必要なものに大別される。前者の項目として,基本形の頻度(特定の文法項目に関わる語の頻度,基本語以内での意味体系の記述など),語構成の頻度(接辞・語基の頻度,競合する形態の頻度など),後者の項目として,語形の頻度(同音異義語の頻度,競合する変化形の頻度など),語群の頻度(コロケーション,競合する共起語の頻度,語順の頻度など)がある。成果について,順次論文の形にまとめるという作業と並行して,今後はホームページ上での情報発信にも取り組んでいきたい。
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