研究課題/領域番号 |
25370480
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
富平 美波 山口大学, 人文学部, 教授 (00188799)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 古今釈疑 / 方中履 / 中国語学 / 音韻学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は方中履著『古今釈疑』巻十七(別名「切字釈疑」)に表れた方中履の音韻研究の特色を解明することであるが、当初の研究計画では、今年度は、上記の研究のための基礎固めとして、著者方中履の生平について明らかにすることを、年度の課題として設定していた。 上記の計画に基づき、まず、各種の伝記資料索引や漢籍データベースを利用して、明清代の基本的な伝記資料や地方志及び方中履の文集「汗青閣文集」等を所蔵する図書館・研究機関を調査し、それらの機関を順次訪問して研究に資する文献資料を収集した。また、『古今釈疑』巻頭の序文類や目録末尾に刻された校訂者の氏名等が『古今釈疑』執筆と刊行の経緯を知る資料として役立つので、『古今釈疑』の刊本・抄本を所蔵する国内の図書館・大学等を訪問して(一部は通信によった)、巻首の序や凡例・目録等の部分及び巻十七(「切字釈疑」)の複写の収集につとめた。 上記のようにして収集した資料、ならびに方中履の父方以智に関する先行研究や方以智の伝記・年譜等を参照して、方中履の生平、とりわけ父方以智との関係や、『古今釈疑』の執筆時期、『古今釈疑』の最初の刊行の経緯、再刊の行われた可能性などについて考証し、その成果を論文「方中履『古今釋疑』の執筆と刊行について」にまとめ、『アジアの歴史と文化』(山口大学アジア歴史・文化研究会編)の第十九輯に寄稿した。 「切字釈疑」が反映する方中履の音韻研究の特色の検討は、当初計画では翌年の平成27年度の課題として設定していたが、1月に上掲論文が完成したので、3月からは「切字釈疑」全文の読み直しに入り、過去に作成した訳注を適宜参照しつつ、著者の音韻観の特色をよく表すと考えられる叙述を項目別に抜き書きする作業を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国内の図書館・研究機関などが所蔵する図書(漢籍及びその影印本・排印本)の中に利用可能な資料がかなり豊富に存在しており、その閲覧・収集が順調に運んだため、早めに論文の執筆にとりかかることができた。 本務校で兼任している研究科が逐次発行している研究叢書の原稿提出期限が平成27年度の半ばに予定されている。翌年度の課題の1回目の成果発表を、やや早くはあるがその機会に行おうと考え、そのため研究計画を前倒しして実施した。 但し、これまでの研究において考証が不足していると感じる部分も多く有り、それらについて補充的研究を重ねてゆく必要があるので、最終的に研究期間が余るような事態にはならないはずである。
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今後の研究の推進方策 |
方中履の音韻学について、父方以智の学識や意見をどの程度受け継いでいるかを立証しつつ、その特色を描き出す作業に入る予定である。その結果を、「切字釈疑」の本文を引用しつつ、その叙述に基づいてわかりやすく説明する論文にまとめて、年度中に公表する計画である。
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