中国は多言語国家であり、圧倒的に多くの話し手をもつ中国語(漢語)の周囲に、一説に300種弱とも言われる漢語以外の言語が話されている。こうした状況は古くから徐々に形成されてきたものである。本研究では、言語接触の観点から、明代に約500年前に編集され、中国とその周囲の諸言語の発音を漢字音訳によって記した『華夷訳語』と呼ばれる一連の辞書を扱う。資料の分析を通じ、中国の周囲に当時話されていた諸言語と中国語との間の発音上の差異を浮き彫りにし、同時に、非漢語と漢語方言の間の言語地理的な対応関係を明らかにすることを試みた。
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