研究課題
研究期間に行われた研究成果は以下の三つの観点からまとめられる。1. 経年変化を追うために、時を隔てて行われた二つ以上の調査の言語地図の比較研究を徳之島と新潟について実践した。(1)1976年の徳之島全島調査と2008年の再調査、二つの調査結果を比較すると、以下の4つのパターンがあることがわかった。A 地域差維持、B ある方言形の分布の拡張、C 伝統的方言形の消失、D 新方言形の出現。(2) 時を隔てて行われた三つの全国調査(LAJ、GAJ、FPJD)により辿る実時間変化と、大学生の方言調査データ(CS)とFPJDにより辿る見かけ上の変化から、新潟県方言について二つの対照的なパターンが見つかった。一つは、西日本的語形の伝播が共通語でもある東日本的語形により阻まれた例、もう一つは進行中の変化である。2.準体助詞に注目した言語地図の総合を行った。GAJ及びFPJDについて準体助詞の個別地図、語形ごとに集計した集計地図の作成を行い、語形変化の方向を推定した。3.徳之島方言における進行中の変化について調査分析を行った。第一に、壮年層対象の全島面接調査に基づき地図化を行い、一段活用動詞連用形における新しい形式の台頭や方言敬語の活用形の消失などについて報告した。また、否定の意思を表わす形式(動詞の連用形+ari(ある)の否定形)の存在とその現在の分布状況を明らかにし、島内で最も古いaraNから、anaN、naNへの変化が進行中であること、亀津・亀徳ではaraiという形式が生まれていたことを示した。また、徳之島の老年層調査で、浅間で規則変化第二類であった動詞が、犬田布では規則変化第一類に合流していることを明らかにし、これが、ラ行五段化のプロセスの一部であり、琉球方言では、ラ行五段化が否定形でまず進行し、連用形では遅れて進行していることを先行研究にもとづく地図化により示した。
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The future of dialects: Selected papers from Methods in Dialectology XV. (Edited by Marie-Helene Cote, Remco Knooihuizen and John Nerbonne), Language Science Press
ページ: 363-376
http://www.unii.ac.jp/~chitsuko/inet/
http://www.unii.ac.jp/~chitsuko/english/