研究課題/領域番号 |
25370490
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
井土 愼二 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80419233)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 母音体系 / 言語接触 / タジク語 / ペルシア語 / 中央アジア / ウズベク語 |
研究実績の概要 |
論文「New Persian vowels transcribed in Ming China」を論文集『Iranian Languages and Literatures of Central Asia』に発表したほか『Journal of Jewish Languages』誌の査読を通過済みの論文が1本と論文集『Trends in Persian and Iranian Linguistics』の査読を通過済みの論文が1本がある。さらに、投稿済みの研究ノートと投稿済みのウズベク語母音に関する研究論文が一本ある。 これらの論文で行っていることは基本的に、十五世紀中央アジアの新ペルシア語の母音体系、十九世紀の中央アジアの新ペルシア語の母音体系、また、十九世紀のウズベク語の母音体系の再構である。主なデータ源は回回館雑字、ヘブライ文字表記のウズベク語や新ペルシア語のテキストで、いずれもブハラからサマルカンドにかけての地域の変種を反映したものである。これらの論文で再構された母音体系を組み合わせて十九世紀以降のウズベク語の母音体系の、同地域においての変化が、当然完全にではないが、明らかになってきた。 さらに、もう一本論文を書くにほぼ十分なデータが本研究によるフィールドワークから得られているので、研究に割ける時間の量によって、間もなく、または一年程度で投稿にこぎつけることができると予想している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的はウズベク語の母音体系の成立過程を明らかにすることであるが、本年度までの研究においては、19世紀以降の変化についてはともかく、19世紀以前の変化については、先行研究を超える研究成果を残すことはできていない。一方、研究代表者は本研究の特色として「タジク語母音体系の変化を踏まえたうえでウズベク語母音体系の変化を明らかにする」ことを挙げているが、その「タジク語母音体系の変化」については、これも本研究の特色として挙げた「『回回館譯語』やティベリア式発音記号が付されたヘブライ文字で書かれた資料」の利用を通して、幾つかの成果を挙げた。これらは論文として発表済みもしくは投稿済みである。よって、進捗状況としては「遅れている」に非常に近いが、現在執筆中の論文においては(これは19世紀以降のものではあるが)ウズベク語(の前身)であるチュルク語の一変種の音韻の再構をしているので、区分としては「やや遅れているを選んだ」。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載のエフォートは前任校在籍時に申請した時のもので、名古屋大学に転出してよりのち、大きく下がった。2016年度は研究期間延長の主因である大学運営のための諸業務(事務)がさらに増大しているため、研究に割ける時間は僅少である。この状況に鑑みれば、現在までに得られたデータをもとに論文の執筆をその時間の全てを使って進めることが上策と考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学・部局運営や教育にかかる諸業務の増大及び家庭の事情による研究の困難を主な事由とした補助期間延長を行ったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
処理速度等に時折問題が見られるようになったため、コンピュータのハードウェア及びソフトウェアを更新したい。校務が許せば、出張と海外での学会発表を行いたい。また、得られたデータがバラバラに保存されているので、その整理とバックアップを行うために複数の大容量ハードディスクを用意したい。
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