研究課題/領域番号 |
25370494
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
孟 達来 島根県立大学, 総合政策学部, 助手 (40609913)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルタイ諸語 / 華夷訳語 / コーパス / 漢字音訳 |
研究実績の概要 |
本研究は、アルタイ諸語の「華夷訳語」を取り上げて、音訳された語と音訳漢字の対応関係を反映したパラレルコーパスを構築し、これら「華夷訳語」の漢字音訳方式を解明することを目的としている。平成26年度の研究を以下のように実施した。 1.昨年度未完の『女真館訳語』のコーパス作成作業を完了し、研究に必要とする音レベルでの対応関係を含めるデータと、文節レベルでの対応関係を含めるデータを抽出し、データベースを作成した。また、全音訳漢字の確定や女真語音と音訳漢字の対音データの分析を行い、漢字音訳方式の考察のための前提作業を終えた。 2.昨年度作成したコーパスに基づき、モンゴル語が扱われた『華夷訳語』(甲種本・語彙部分)の漢字音訳方式に関して、全ての対音パターンを整理したうえ、音訳漢字の使い分けについて用例を用いた分析を行った。 3.アルタイ諸語の「華夷訳語」のうち、ウイグル語が扱われた『畏兀児館訳語』に対して、作成したコーパスに基づき詳細な分析を行い、『「畏兀児館訳語」の漢字音訳方式の研究』というタイトルで、「第1部 漢字音訳方式の考察」「第2部 対音・語彙集」「第3部 ウイグル語と漢語の全単語索引」という3つの部分からなる著書の原稿をほぼ完成するところまで進めることができた。 また、各種「華夷訳語」の音訳漢字に関する比較研究をより広く取り上げるため、「華夷訳語」の一種である、日本語が扱われた『日本館訳語』のコーパスも作成し、日本語と音訳漢字との全ての対音データを抽出し、アルタイ諸語の「華夷訳語」の音訳漢字との比較分析を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、昨年度未完の『女真館訳語』のコーパス作成作業を完了し、且つ研究目的に沿ったデータを抽出したうえ、データベースを作成し、漢字音訳方式の分析・考察のための前提作業を終えた。 また、モンゴル語が扱われた『華夷訳語』(甲種本・語彙部分)の漢字音訳方式に関して、データ分析を深め、漢字音訳方式に関する考察を進展させた。 特に、『畏兀児館訳語』のデータ分析と音訳方式の考察を進展させ、『「畏兀児館訳語」の漢字音訳方式の研究』という著書の原稿をほぼ完成に近づけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については以下のように考えている。 1.必要に応じて、コーパスを拡張する。 2.モンゴル語、ウイグル語、女真語の各種「華夷訳語」のコーパスデータに基づき、音訳において形成した対応関係を用例の中で分析する。 3.音訳における各言語の音と音訳漢字との対応関係のデータに基づき、各種「華夷訳語」の音対応の分析と音訳漢字の機能・役割の分析を行い、音訳規則を導出し、音訳方式の全体像の解明を図る。 4.研究成果の取りまとめを実施し、公刊に向けて作業を進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年も昨年度と同様、予定していた専門知識の提供やデータ入力を外部に依頼する必要はなかったので、そのための謝金等の支払いは発生せず、謝金等の金額が残されている。また、入手できていない研究図書も未購入のため、物品費の一部が残されている。そのため、繰越金が発生している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費の使用については大体以下のように考えている。 1.出張:日本国内での文献資料調査のための出張、中国(北京、内モンゴル)での文献資料調査のための出張、関連の学会や研究会参加のための出張等を予定している。 2.物品購入:主に、昨年度と同じく、アルタイ諸言語や漢語に関する書籍、各種「華夷訳語」に関する書籍、コーパス言語学に関する書籍の収集を行う。
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