研究実績の概要 |
最終年度にあたり、本年度は過去2年の成果に基づいて、日英パラレルコーパス(Web Para News)に拠り、日本語の格外連体修飾形がどのように英訳されているかに焦点を当てて分析した。その理由は、カッシーラ著『シンボル形式の哲学』において,ドイツの言語類型学者、H.ヴィンクラーが「日本語は名詞を中心に一見無形式な形で、欧米の多くの言語があらゆる種類の複文、関係代名詞や接続詞を含む複文によって表現する内容を表現している。」と言っているという引用があり、実際にどのように日本語が名詞重視型であり、欧米語が文形式にその表現手段を頼っているか考察する必要を感じたからである。 格外連体修飾形の英訳形を調べてみると、次の5つの形に分類できた。①動詞に置き換える。例:15%減らす方針を打ち出す=decide to cut it's produciton ②助動詞を用いる。例:作業をする必要がある=must be reviewed. ③形容詞を用いる。 例: 送らせている原因だ=be responsible for ④分詞構文を用いる。例:治療中止を求める動機=prompting to ask ⑤名詞・名詞修飾節を用いる。例:動機=motives 以上の考察から、アジア言語の特徴とコムリー(1996,1998,2010)が認識した格外連体修飾形は、英語では名詞以外の品詞や句・節、時には文に置き換えられることが、認められた。また、ホットワード機能を利用して、日英の翻訳上の対応関係が強い名詞とそうでないものがあることも確認した。たとえば、「必要」は、レキシコンneedの派生語でその多くが翻訳されているが、それとは対照的に「方針」「様子」は、実に様々なレキシコンと文法カテゴリ―を用いて翻訳されていることを証明した。
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