研究課題
基盤研究(C)
本研究では、言語・文化的実践を考察の対象とすることで、そこに関与する「不均衡」の諸側面を、(1)意図を達成するための「コード/モダリティの不均衡」;(2)社会的行為に参加する際の「スタンス/参与枠組みの不均衡」;(3)コミュニケーションを取り巻く「環境的不均衡」に絞って談話分析を行い、言語/非言語/環境要因がどのように相互理解と知識・技能の共有化を推進するのかを検証することを目的とする。その具体的な実業場面として、(1)(語学)教育と技術指導の現場、(2)工場/工房/スタジオなどの「ものづくり」の現場、(3)ビジネス場面における通訳や会議業務を取り上げることとした。本年度は、研究代表と研究分担者により、主に(1)教育・指導場面の言語使用について分析を進め、その成果を第33回社会言語科学会(神田外語大)において両者の分析結果を共同発表という形で公表した。また、(2)スタジオにおける番組制作時の映像データをもとに、研究協力者の助言と情報提供をもとに、身振り研究会合宿において当面の研究成果を発表し、参加者から有益なコメントと指摘をいただいた。ただし、(3)についての研究については、今後のデータ収集及び研究協力者からのインプットを待つ状況である。また、本研究テーマに関連する内容として、ナラティブにおける概念的スキーマと参与者構造の不均衡について、「話し言葉の言語学ワークショップ」及び「メディアとことば研究会」においても随時研究成果を発表してきた。また、本研究に先行する研究組織から継続的に取り組んできた出版企画(Elsevier社発行の専門誌、Language & Communicationの特集号編集)が日の目を見たことが最大の成果といえよう。
3: やや遅れている
研究代表者が2013年度より社会言語科学会理事として編集委員長に就任したことに伴い、年々増加する論文投稿への対応を迫られた年であった。具体的には、編集委員会の委員更新と増員、電子査読システム導入に伴う査読体制の変更、それに付随する査読規定や執筆要項・査読者心得等の改訂(日英語)などに追われ、2013年末まで十分な研究時間を確保できない状況が続いた。また学内的にも、所属学部の改組と、それに付随して3年前に新設した専攻組織の完成年度を控えて、教学面での業務が累積したことも災いした。
2014年度は編集委員長業務が軌道に乗ると予想されるため、2013年度の遅れを挽回できると期待している。具体的には、2015年2月を目標に、本学にて「言語実践における不均衡」をテーマにしてワークショップまたはラウンドテーブルを開催し、本研究組織ではカバーしきれない分野からの情報と知見を求める。具体的な参加者と規模は暫定的であるが、関連分野から優秀な論考を募って将来的な報告書、論文集の刊行を検討するつもりである。最終年度に当たる2015年度は、研究成果の公表と出版に向けて学会発表や編集作業を中心に行う予定である。
学内および学会業務激増のため、当初予定していた国内外でのデータ収集が十分に実施できなかったことが主な理由である。それに付随して、音声資料の書き起こしやデータ管理費等の費目も使用に至らなかったことが挙げられる。各種業務の円滑化を図り、データ収集と現有データの分析を進め、2014年度内に代表者の所属機関において学会に準ずるワークショップ、ラウンドテーブルなどを開催する予定である。同時に、学生アルバイト等募って、データの文字化と蓄積に注力する。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (3件)
愛知大学英文会誌
巻: 19 ページ: 44-64
Language & Communication
巻: 33 (4) Part A ページ: 345-350
10.1016/j.langcom.2013.03.009
巻: 33 (4) Part A ページ: 404-419
10.1016/j.langcom.2013.03.001