研究課題/領域番号 |
25370509
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岡部 嘉幸 千葉大学, 文学部, 教授 (80292738)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 近世語 / 江戸語の文法 / モダリティ / 人情本 / コーパス |
研究実績の概要 |
(1)昨年度に引き続き、「当為判断・価値判断」という文法概念に関して、広く日本語学以外の領域の先行研究を収集し、概念内容の成立と検討を行った。また、「当為判断・価値判断」形式とされるスレバイイ、スルトイイ、シタライイの現代語および江戸語の用例を収集した。現代語の用例収集は「現代語書き言葉均衡コーパス」(BCCWJ)に、江戸語の用例収集は研究者が構築した人情本テキストによった。 (2)江戸語の調査資料の拡充のため、新たに、人情本『浮世新形 恋の花染』(松亭禁水、天保3(1832)年)、『鶯塚千代の初声』(松亭禁水、山々亭有人、安政3(1856)年)の電子テキスト化および本文校訂作業を行った。 (3)国立国語研究所と連携して、人情本『比翼連理花廼志満台』(松亭金水、天保7(1836)-天保9(1838)年)のコーパス化を行い、その成果を、日本語学会2015年度秋季大会(山口大学、山口県教育会館、山口県立図書館、2015年10月31日-11月1日)において発表した。 (4)大正期から昭和前期にかけての講演・演説における丁寧表現マスの終止・連体形マス/マスル両形の使い分けの様相を調査した上でその使い分けの条件を分析し、その成果を「大正~昭和前期における助動詞マスの終止・連体形について―マスルの使用状況を中心に」相澤正夫・金澤裕之編『SP盤演説レコードがひらく日本語研究』(笠間書院、2016年3月)として公表した。さらに、現在、近世江戸語における丁寧表現マスの終止・連体形マス/マスル両形の使い分けに関しても調査を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題申請時には予定していなかった、大学院専攻長(副研究科長)就任により、大学内の管理業務および大学院改組に関わる業務に携わることになり、本研究のための予定エフォートを達成することが困難になった。 また、本研究に必要な江戸語テキスト(人情本)の電子化とその校訂作業に関しても、作業適任者の選定に手間取り、作業の開始が計画より遅れてしまい、それらの電子テキストを用いた用例収集および分析作業にまで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度に達成できなかった「当為判断・価値判断」という概念についての本研究課題なりの見解の提示、および、江戸語における「当為判断・価値判断」諸形式の特徴を、現代語との対照という観点から明らかにすることを最優先の課題として研究を遂行する。 また、本研究課題の遂行と密接に関わる江戸語資料の電子テキスト化および電子テキストのコーパス化については、研究代表者が参画する他の研究プロジェクト等と連携をとりつつ、平成28年度も引き続き行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題申請時には予定していなかった、大学院専攻長(副研究科長)就任により、大学内の管理業務および大学院改組に関わる業務に携わることになり、本研究課題のための予定エフォートを達成することが困難になった。 さらに、本研究課題に必要な江戸語テキストの電子化とその校訂作業が、作業適任者の選定に手間取ったことにより、計画より遅れてしまい、それらの電子テキストを用いた用例収集および用例分析作業にまで至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、江戸語における「当為判断・価値判断」の諸形式の特徴を、現代語との対照という観点から、明らかにすることを最優先の課題とする。未使用金額の一部は、この課題に関連する書籍や資料を購入するために使用する予定である。また、平成28年度は、本研究課題の最終年度に当たるので、これまでの研究成果を、国内の学会で発表する予定である。未使用金額の一部は、研究発表のための旅費としても使用する予定である。
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