研究課題/領域番号 |
25370513
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
近藤 明 金沢大学, 学校教育系, 教授 (50178406)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 危惧表現 / 「モゾ」「モコソ」 / 複合辞 / 可能・可能性系形式 / 疑問・疑問推量系形式 / 評価的複合形式 |
研究実績の概要 |
平成26年度においては、まず「モゾ」「モコソ」の表す危惧の性質について、「特定的危惧」「不定的危惧」という観点からは「特定的危惧」、「未実現事態危惧」「既実現事態危惧」という観点からは「未実現事態危惧」であること、また「危惧」をモダリティの一環として位置づけるなら、「真正モダリティ形式」「擬似モダリティ形式」のうち、「モゾ」「モコソ」は「真正モダリティ形式」に属することを論じた論文を発表することができた(「「モゾ」「モコソ」の表す「危惧」の性質をめぐって(上)」『北陸古典研究』29)。 また近松世話浄瑠璃を中心とした近世前期の危惧表現形式について、「~カネナイ」「~(ウ)モシレヌ」等の可能・可能性系の複合的形式、「~マイカ」等の疑問・疑問推量系の形式、「~バワルイ」等の評価的複合形式等が候補として挙げられる旨を論じた論文を発表することができた(「近世前期における危惧表現形式―近松世話浄瑠璃を中心に―」『金沢大学人間社会学域学校教育学類紀要』7。金沢大学学術情報リポジトリ「KURA」でも公開予定)。 加えて化政期~幕末期江戸語における危惧表現形式について、「危惧」の意の「~カネナイ」の定着・「~(ウ)カモシレナイ」が「~(ウ)モシレナイ」に代る兆しの現れ・「~トイケナイ」を後項とする評価的複合形式の台頭等、近世前期と比べて現代語へのつながりが強くなっている面が看取される一方、「~ワルイ」を後項とする評価的複合形式がなお根強く用いられている等、現代語とは異なる様相も見受けられるとする論文が印刷中である(「化政期~幕末期江戸語における危惧表現形式―滑稽本・人情本を資料として―」『国語語彙史の研究』34 和泉書院)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近世前期・近世後期における危惧表現形式をピックアップする作業は、おおむね当初の計画・期待通りに進めることができた。加えて、「モゾ」「モコソ」の表す「危惧」の性質について、「特定的危惧」と「不定的危惧」、「未実現事態危惧」と「既実現事態危惧」、さらに「真正モダリティ形式」「疑似モダリティ形式」という観点から考察した成果を発表することができた。「モゾ」「モコソ」以外の、複合助動詞系表現形式といった個々の類型についての詳細な各論的考察は、具体的な成果を発表するには至らなかったが、上記の成果を踏まえて当初の想定よりも踏み込んだ考察を行う下地が整ったと考えられる。 以上から、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
「モゾ」「モコソ」に共通する危惧表現としての性質については一定の成果を得ることができたが、「モゾ」と「モコソ」の相違の有無等についても考察を進める。 また今までの研究の中で、各時代における「モゾ」「モコソ」以外の危惧表現形式の候補として、複合助動詞系の形式、可能・可能性系の複合的形式、疑問・疑問推量系の形式、評価的複合形式等を挙げることができたので、それらについての詳細な各論的考察を進め、危惧表現史の輪郭に近づくことをめざす。
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備考 |
『金沢大学人間社会学域学校教育学類紀要』7号に発表した論文は、金沢大学学術情報リポジトリ「KURA」 http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/ でも公開される予定。
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