辞書および関連資料の調査・撮影については、予定どおり四国・中国地方の所蔵者を中心に実施することができた(愛媛大学附属図書館・愛媛県立図書館・大洲市立図書館・東温市歴史民俗資料館(4月)・岡山県立記録資料館(7月・2016年2月)・弘前市立図書館(10月)・鹿児島大学附属図書館・鹿児島県立図書館(12月)・岩国徴古館・岩国学校教育資料館・岩国市中央図書館・呉市立図書館(2月))。 この調査の過程で、使用実態調査の一環となる、旧蔵者の位相と使用辞書類との対比研究の対象候補に、小規模大名家の例として岩国徴古館蔵書、足守藩木下家文書(岡山県立記録資料館に新収・公開)を加えうる見通しがつき、選択の幅を広げることができた。 辞書および関連資料の収集については、節用集は7点と少なかったが、『真草二行節用集』(イ部標目「以」字本異版)『急用間合即坐引』(美濃判合冊体)は他に見られないものをはじめ、『万花節用字林大成』『早字節用』(文政14年版)『(真草両点)数引節用集』(非薄葉)など比較的所蔵者の少ないものを収集しえた。このほかの辞書体のものとして、詩作系統刊本5点(韻会捷見・漢和三五韻ほか)、漢和字典4点(倭玉篇2点、大広益会玉篇2点)を得た。『大広益会玉篇』は寛永8年刊ながら既収の同年記本とは別版で、研究上の価値がある。また、『倭漢皇統編年合運図』(寛永7刊・正保3刊か)を得たが、これまで手を着けかねていた節用集の付録の検討を開始する足掛かりとなるものである。 成果の発表としては論文4点(印刷中1点を含む)があり、レフリー付き1点、隔月刊商業誌1点、単行本所収2点など、公開効果の高いものに提示できた。このほか、招待講演1本があった。
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