研究概要 |
本研究の目的は、従来、直観的・感覚的にしか言及されてこなかった、文の読みやすさ/読みにくさに対して、文構造、とりわけ名詞を修飾する連体修飾節、いわゆる接続助詞に導かれる節(以下、「接続節」と呼ぶ)などの複文構造という視点から明示的な指標を与えることにある。そこで、本研究においては、連体修飾節や接続節などの複文構造が文の読みやすさ/読みにくさにどのように影響するかを、ある程度まとまった量のデータをもとに検討する。 ここではデータとして外国語を日本語に翻訳したものを用いる。これは、以下のような事情による。読みやすさ/読みにくさを検討する手法としては、同一事象を複数の書き手が記述したものを比較することが有効である。外国文学の、複数の翻訳者による翻訳は、そのような条件を満たしている。 本年度に行なった具体的な作業は以下のとおりである。 (1)The Great Gatsby(F. Scott Fiztgerald)原文から、関係節、及び従位接続詞の導く節、および分詞構文を含む文を抽出する作業を進め、完了した。これとと並行して、翻訳文の構造情報としてどのような情報を付加すべきかの検討を進め、暫定的な情報付加の仕方を決定した。(2)英語の原文(Nine Stories, The Grapes of Wrath)から関係節、及び従位接続詞(as, when, though など)の導く節を含む文を抽出する作業を開始した。 (3)The Great Gatsby の翻訳(5種類)から、 (1)で抽出した原文一文に対応する箇所を抽出、原文と共にExcelファイルに入力した(アルバイタ作業)。(4)(3)のアルバイタ作業による入力データを用いて、(2)で暫定的に定めた情報の適切性を検証した。(5)翻訳実務に携わっている翻訳者に協力を求め、分析方法等への助言を得るため、検討会を行なった。
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