Ⅰ、平成28年度までに、世阿弥真蹟文書と世阿弥真蹟外文書を、直接原本の閲覧調査を行うか、原本調査が叶わない場合はカラー版等の複製本によって翻字本文を作成した。世阿弥文書の日本語史上貴重な点は、世阿弥独自の朱書、小字書き、声点、多くの修訂本文の存在することである。それらを丁寧に把握して翻字本文を作成した。そしてそれに基づいた語彙総索引の作成も、世阿弥独自の表記を割愛することなくすべてを収めるようにした。原稿は修訂版を何度も作成し精確を期して以下のような15本をそれぞれ研究誌に投稿し公刊して来た。 Ⅱ、世阿弥自筆真蹟文書―能楽論書『風姿花伝』巻第六(観世文庫蔵)。自筆能本『柏崎』『盛久』『江口』『雲林院』『多度津左衛門』(以上宝山寺蔵)。『難波梅』『松浦之能』『布留』『阿古屋松』(以上観世文庫蔵)。自筆書状(宝山寺蔵)。 Ⅲ、世阿弥真蹟外文書―能本『弱法師』『知章』(以上宝山寺蔵)。能楽論書『三道』(吉田文庫蔵)。小謡集『金島書』(吉田文庫蔵)。 Ⅳ、次の世阿弥真蹟文書2本『花伝第七別紙口伝』『花修内抜書』(以上観世文庫蔵)は翻字本文、語彙総索引の作成を行ったが、研究誌への投稿は未完である。。これは所蔵者の観世文庫での閲覧調査を行っておらず、観世文庫のアーカイブ等を検索して真蹟本の本文の把握に努めたが精確を期すことが出来ないことにも依っている。 Ⅴ、世阿弥真蹟文書と世阿弥真蹟外文書の計17本の翻字本文と、各語彙総索引とを合綴した『世阿弥文書綜合語彙索引』のデ-タ―ベ-ス作成も『花伝第七別紙口伝』『花修内抜書』2本の未完成で公刊に至っていない。
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