本研究では,書き言葉均衡コーパスを利用して,モダリティ形式の使用実態調査を行ってきた。『現代日本語文法』(くろしお出版)第8部「モダリティ」の記述のうち,内省による判断に疑問が残った項目を拾い上げ,調査項目としている。調査結果については例文を観察しながらの議論を行い,記述の妥当性の検証を試みてきた。今年度は2014年度までに行った調査をふまえ,残る項目の調査や,調査結果についての議論を進めた。 研究の結果を,220ページの報告書冊子としてまとめた。第2章の表現類型のモダリティでは,「です?」,「ないものか」,「だろうか」「っけ」,「しようっと」,「つもりはない」「つもりではない」「ないつもりだ」,「気だ」,「まい」,「この[名詞]!」,「[名詞]の~さ!」「~こと!」など13項目,第3章の評価のモダリティでは,「がいい」,「方がましだ」,「べし」,「てもかまわない」,「てはだめだ」の5項目,第4章の認識のモダリティでは,「かもしれないです」,「かもしれぬ」「かしれない」,「かもわからない」,「ようだ」の「よう。」,「(し)そうではない」,「(する)そうだ」の「そう。」の6項目,第5章の説明のモダリティでは,「のだった」,「のだから」,「わけなのだ」,「わけだった」,「わけにはいかない」,「はずがない」「わけがない」,「ものですか」,「たいものだ」など11項目,第6章の伝達のモダリティでは,「わ」,「かね」,「しような」,「ですな(あ)」「ますな(あ)」,「とも」,「もの」(「もん」)の6項目を対象とした。 調査の結果,母語話者としての内省ではあまり用いられていると感じられないモダリティ形式が,特定のジャンルに集中して出現するケースなど,新たな発見があった。モダリティ形式に限らず,ジャンルによる出現の違いを観察することの重要性が明らかになった。
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