研究課題/領域番号 |
25370541
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
奥野 忠徳 弘前大学, 教育学部, 教授 (80125517)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 前置詞 / メタファー / 認知意味論 / 中核的意味 |
研究概要 |
本研究の目的は、英語前置詞の意味の認知意味論的解明である。平成25年度の研究目標は、(1)全体計画の基盤を成す先行研究の批判的分析と、(2)それと並行しての資料収集及び資料整理であった。25年度の具体的成果を「英語前置詞INの意味分析」(平成25年10月刊)として上梓した。ここでは、まず、先行研究の中でもINを非常に詳細に論じたHerskovits (1986)の説明の問題点を指摘し(上の(1)に相当)、さらに、今まで漠然としか捉えられていなかったINの全体像を明確にした。それによると、INを使用している話者の空間認知には(少なくとも)3種類が認められ、INはそのそれぞれに対応する意味を持っている。たとえば、ボウルに入っている物体は、通常、in the bowlと言えるが、ボウルをひっくり返してしまうと、もはやin the bowlとは言えないということや、椅子に人が座っているとin the chairと言えるが、本が置いてある場合にはon the chairとなるというような現象がすべて統一的に説明できることが示された。INの文字通りの用法において3種類認められることを豊富な例で証明したが、それにとどまらず、その3つの用法からそれぞれがメタファーによりさらに拡張されていることも指摘した。これにより、今まで体系的記述を強く拒んでいたINの用法がすべてきれいにつながることが例証された。INの意味の解明は、平成26年度の目標の一部であり、それを先取りすることになったが、26年度は、さらに、AT、ONについて解明するとともに、WITHやFROMなどの解明に向けて研究を進めるつもりである。特に、ATという前置詞と、INやONなどの前置詞は、本質的に異なっているのではないかと推測しているが、その推測が正しいことを豊富な例を用いて証明したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の達成目標は、(1)全体計画の基盤を成す先行研究の批判的分析と、(2)それと並行しての資料収集及び資料整理であった。(1)については、上梓した論文でかなりの程度達成された。(2)についても、目標のおよそ90%は達成している。さらに、平成26年度の達成目標を「場所を表す前置詞AT, IN, ONについて、その選択がどのような要因に基づいて行われているかを明らかにする」としているが、INについては論文として平成25年10月に上梓した。また、ATとONについても、ほぼ完成に近づいている。このように、平成25年度の研究目標の達成度は、当初の想定よりも、大幅に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、場所を表す前置詞のONとATの全体像を解明する。特に、ATと、他の前置詞(ON, INなど)との本質的な相違点を明らかにしたい。また、すでにFROMとWITHについても研究は順調に進展しているので、これも完成に持っていくつもりある。それから、平成27年度の目標としている「FOR, TO, OFについて、その数多い用法を列挙、整理し、その間にあると思われる意味的ネットワーク(semantic networks)を解明する」ために、平成26年度では、特に一番厄介であるOFについての基本的資料の収集、及び、仮説構築に向けての作業も並行して開始するつもりである。OFは、一般的には、文法的な要素ととらえられていて、その(認知的)意味に言及されることはほとんどないが、本当にそうであるのかという点を検証してみたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
理由1:認知意味論についての良い書籍がそれほど見当たらなかった。 理由2:今年度は英語の前置詞の意味の解明に限定してので、その分野を扱った書籍はさらに少なかった。 理由3:印刷についても、節約を心がけたので、物品費(特に、プリンターのインクカートリッジ)の購入も当初の予想を下回った。 次年度は、他の言語(スペイン語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、イタリア語、フィンランド語など)の前置詞についても調査を開始するので、そのための資料が大幅に増加することが予想される。次年度使用額をそのための予算として使用するつもりである。
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