研究実績の概要 |
最終年度の研究の成果:今年度は最終年度であるため、今まで手をつけていなかった前置詞であるover, to, from, around, ofを中心に、その認知意味論的ネットワークを完成させることを目標とし、ほぼ完成に至った。その内、overについては、先行文献でも広く研究されているが、それらはまだまだ説明が不備であること、および、説明がoverの全体像には及んでいないことを指摘し、その問題点を克服する形で新しい提案を行い、それを論文として発表した。また、atの意味構造ついての論文も近く出版予定である。
研究期間全体を通じて実施した研究の成果:英語前置詞が持つ意味をできる限り体系的に記述することを目標に設定し研究を実施してきた。まず、初年度は主に前置詞inを分析し、次年度はonを分析し、それぞれ論文として発表した。物理空間に基盤を置く中核の意味を設定し、それがさまざまな一般拡張原理および英語特有の原理に基づき拡張されていくという研究仮説を設定し、この原理ですべての前置詞の意味が説明できるということを証明するのが最大の目標であったが、非常に複雑で多様な意味を持つin、on、at、overの多様な意味が完全に、そして、体系的に記述できることが証明された。さらに、to、from、of、around、aboveなどもそのような考え方で説明できることも判明した。(それらについてはまだ論文の形では発表していないが、9割方完成している。完成次第、順次発表するつもりである。)本研究で明らかになったもっとも重要なことは、一見複雑に見える語の意味が、実は非常に単純な中核的意味から拡張されているということである。今回は前置詞に絞ってそれを証明したが、実は、すべての言語のすべての語彙項目についてそれが言えると考えられる。本研究により、もっとも深いレベルから言語現象を説明できる可能性が見えてきた。
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