研究課題/領域番号 |
25370543
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
仁科 弘之 埼玉大学, 教養学部, 教授 (20125777)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生物言語学 / 言語の運動起源 / 運動計画の木表示 / 書き換え規則 |
研究実績の概要 |
運動を支える骨格上の関節を制御するマクロな記号論が、ヒトの言語の文法を創発する手がかりとなるとの仮説に基づいて、模型ロボットの制御データを用いて、運動由来の原初的な文法を探っている。研究1年目(H25年度)には、骨格の形態におよそ基づく木表示上に、運動計画データから抽出したパラメータ(例えば腕立て伏せをさせるには、各時点で各関節を代用するサーボモータが何度回転するかという値)を配分した。これらの回転角度は、木の終端連鎖に含まれる。2年目である本年度、H26年度は、この木表示に改良を加えた。即ち、木表示を各時点ごとのものから各区間毎の木表示に変え、木の上に、各隣接時点の差分(区間)毎の関節の回転差分の値が表されるようにした。各関節において、その区間で回転がない時はゼロ、その区間に回転がある時は正或いは負の度数が示される。これらの木はその区間における骨格上の関節に回転があるか否かの、離散的な情報を含む。個別動作の運動プログラムに基づき区間毎にこのような木を定義すると、これらの木の連鎖全体がその個別動作を表示している。木表示での支配関係において、各関節節点がその回転の差分値を支配し、関節間の力の伝播は埋め込み可能であるので、埋め込みを繰り返し的な(recursive)書き換え規則を用いて表現した。この書き換え文法が文脈自由文法であるかをさぐったが、個々の単一木上では、句構造文法であるよりも、むしろチョムスキー階層に於いては一段階単純な帰納文法であった。しかし、帰納文法によって生成される木の連鎖が文法の複雑度に実質的な負荷を与える可能性があることを指摘した。本研究をパヴィアの学会に提出した。本研究で用いた差分値から動作動詞の論理的表示の意味論を構築する試みを開始し、ジュッセルドルフの学会に提出した。これは筆者の動作動詞の外延の様相論理的表示に関わる研究上にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の木表示を差分に改良することにより「動作の文法」の特徴、特に複雑度を測りやすい表示をえることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究に基づき、纏まった研究論文を完成させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に残額が639,152円発生しているが、これは納入に時間がかかり年度末を越えたためである。3月に発注したロボット一式(*)が組み立て、調整に時間を要し、4月に入ってから納入された。研究計画には遅れは無い。
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次年度使用額の使用計画 |
全学予算の、上記のロボット一式分(Robovie440,400円と付属ソフト19,000円)は納入され、すでに4月に消化された。平成27年分は学会出張2回(50万円)、書籍購入(50万円)、その他消耗品(10万円)等に使用する予定である。
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