研究課題/領域番号 |
25370544
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
石原 由貴 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (40242078)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 疑似分裂構文 / 反復 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に行った日本語の疑似分裂構文における受け身や尊敬を表す形態素の反復について、さらに考察を進めた。「太郎がされたのは財布を盗まれることだ」のような動詞句を焦点とする日本語の疑似分裂構文においては、前提部に受け身を表す形態素-(r)areがあると、焦点句でも受け身を表す形態素が起こらなければならない。このことは、意味的には、焦点句の意味上の主語となる要素が、前提部の主語と変わらない意味役割を担わなければならない、という制約として捉えることができる。それを統語的に説明するために、Harwood (2015)の動的なフェイズの考え方を援用する。Ishihara (2016)で主張したように前提部と焦点句は疑問文とその答えであるとすると、平行性の原理により、それらは受け身や尊敬に関して同等の文でなくてはならず、焦点を表す文に焦点化移動や削除がかかり疑似分裂文が派生されると考えられる。HarwoodはvPレベルのフェイズがvPに固定されるのではなく、numerationに応じて変化するという提案を行っている。これに基づくと、受け身の形態素がnumerationに含まれる場合にはフェイズがVoicePとなり、それが焦点化移動を受けるため、vPのみが焦点句に現れることはない。従って、焦点句に受け身の形態素が含まれる場合には、それが必ず焦点句に現れなくてはならないことが説明できる。このように、疑似分裂構文における受け身や尊敬の形態素の反復現象は、焦点化が移動によって派生されており、移動はフェイズに適用されるとする提案を支持するものであると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カリキュラム改革があり教務委員としての仕事が非常に忙しく、研究に使える時間があまり取れなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
「大きいの大きくないのって」のように、肯定形と否定形を並列した形で程度の甚だしさを強調する構文について、一昨年度に扱った「大きい大きい」のような述語重複構文とどこが似ており、どこが違うのか、その特徴を明らかにしたいと思っている。また、日本語の反復構文をあつかった野呂(2016)で取り上げられているその他の反復に関する構文についても考えたいと思っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた学会に行かなかったため
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次年度使用額の使用計画 |
学会に参加し意見交換を進めたり、本を購入したりする予定である。
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