研究課題/領域番号 |
25370547
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
澤田 茂保 金沢大学, 外国語教育研究センター, 教授 (00196320)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 英語文法 / 話しことば / spoken language / tags |
研究実績の概要 |
本研究は、英語における対面状況のコミュニケーションで広く観察される「タグ」と呼ぶ言語形式について、その多様な働きを理論的に考察して、英語の文法論の中に位置付けることを目的にしている。H27年度の計画は「ラジオドラマのスクリプトの音声起こしによるコーパスの作成」、「母語話者インフォマントへのインタビュー調査」、「タグの理論的考察、背後理論の解明」を行うことであった。コーパスの作成については、アメリカのラジオドラマTwilight Zoneシリーズを中心に行った。計画では12タイトルを予定していたが、H26年度と同様、母語話者との面談による確認をしながら進めた結果、時間がかかり6タイトル程度作成となった。母語話者へのインタビューによって、音声起こしの訂正も含めて、スクリプト・データに出てきたタグなどの表現の文脈からは分からない些細な意味について聞き取りを行い、充実した結果を得た。多くのアイデアは、このスクリプトの分析から生まれたものである。タグの理論的考察については、英文法でのタグは単純な断片化した省略構造ではなく、英語コミュニケーションにおいて、ある種のモダリティーの一部を構成するものと考えて、モダリティー論の中に位置付けて考察することとした。本研究の一部が、H28年刊行予定の『英文法を解き明かす―現代英語の文法と語法』シリーズ(研究社)の一巻に収められることになっており、同書第2章に、本研究のタグについての理論的考察を入れる予定である。なお、H27年度の実績としては、スクリプトの分析を通じて、機能語からなる定型表現の存在がSLには特徴的であることがわかり、話しことばと定型についての紀要論文を著した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、英語における対面状況のコミュニケーションで広く観察される「タグ」と呼ぶ言語形式について、その多様な働きを理論的に考察して、英語の文法論の中に位置付けることが目的である。H26年度とH27年度は、英語ラジオドラマのスクリプトデータを作成しながら、その中で広く観察されるタグ形式を分析して、従来英文法が取り上げてきた付加疑問文や命令文のタグに加えて、陳述のタグや応答のタグ、更には様々な固定化したタグ表現などを抽出し、母語話者との聞き取り調査を元に、そのデータの分析・整理を行ってきた。今年度でタグのデータを収集することとその理論的な分析が終わった。最終年度では、これまでの研究で得た結果をもとに、英語におけるタグの働きが理解できるWebの学習サイトを構築することになっている。それにはデータの元に音声サンプルの録音、Web化などが大きな作業が残っており、研究計画全体の達成度は60%と評価する。また、本年度は音声録音をすこし進める予定であったが、他の業務で時間を取ることができなかった。そのため、本年度の達成度は80%と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度の研究推進について:勤務校でH28年度にカリキュラム改革を控えており、現在の業務から当初計画の研究エフォートを割くことは実は困難であると感じており、より少ない時間を有効に使わざるを得ない。今年度の前半においては、前述の専門図書の執筆に時間を割くことを通じて、タグの理論的考察や背後の原理の解明へとつなげたい。また、8月に教員免許更新講習の講師を務める予定なので、その機会に中高学校の英語教員に対して新しい視点に立った文法教育の一つとして、タグの理論を含めたSpoken languageの文法論の方向性を示すこととする。このことは、本研究の計画調書でも触れたことである。そして、10月以降は、母語話者と共に、様々なタグ表現のサンプル・ダイアローグを作成して、タグの理解のためのWeb教材を開発することとする。コンテンツ作成に3ヶ月、外注によるWeb化に3ヶ月を予定している。最終年度以降の研究推進について触れる。本研究が扱ったことは主として英語におけるタグについての基礎研究であった。その過程で明らかになったことは、タグのモダリティー論との関係である。モダリティー論は日本語学では独自の発展をしているので、その成果を取り入れた英語のタグの働きについて研究を進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度は、タグのサンプルダイアローグを母語話者の発話で録音する計画であったが、タグのデータの収集と本研究の内容が一部反映することになる前述の専門図書の執筆のため、時間がとれず実施できなかった。そのため、備品購入の予算を執行できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度においては、当初の計画通り、タグの重要性を示すためのWebページを制作する(外注)計画なので、そのための音声データの作成が必要なので、機材購入を行う予定である。
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