本研究は、英語における対面状況のコミュニケーションで広く観察される「タグ」と呼ぶ言語形式について、その多様な働きを理論的に考察して、英語の文法論の中に位置付けることを目的とするものである。これまでの英語学では、タグ表現は周辺的な言語事象と軽視され、一元的・統一的な理解のフレームというものはなかった。しかしながら、コミュニケーションを教育目標におく場合、タグの研究が不可欠である。 平成27年度は、これまでの母語話者インフォマントとのインタビュー調査を継続し、ラジオドラマの音声をデータベース化して、多様なタグ表現の収集を行うと共に、タグを含むダイアローグのサンプル作成を行った。そして、研究の最終年度として実施したことは、二つある。一つは、タグの働きについて学べる音声付きの教材として、WEBベースの教材を作成したことであり、二つ目は、三年にわたる本研究のまとめとして、タグに関する研究を英語学の専門図書の中に収めて研究社から出版したことである。 第一の事項については、WEBに置くことを想定していたので、著作権を侵さないようにラジオドラマのデータを使わずに、タグを含むダイアローグは自前で作成した。そして、それを母語話者の発話で録音したものを使った。現在は、学内のサーバにおいてあり、今後は教員免許更新講習などの講義で使用する予定である。 第二の事項については、英語語法文法学会が20周年記念として企画した文法書シリーズ『英文法を読み解く』の第9巻「ことばの実際」として、spoken languageの文法論について著すこととなり、その第2章「場面から離れられぬ運命」に本研究で扱ったタグについての研究の成果を入れた。
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