研究課題/領域番号 |
25370550
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
杉崎 鉱司 三重大学, 教養教育機構, 教授 (60362331)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生成文法 / 母語獲得 / 動詞句内主語仮説 / yes/no疑問文 / ミニマリストプログラム |
研究実績の概要 |
生成文法理論に基づく母語獲得研究は、ヒトに生得的に与えられた「普遍文法」(UG)の属性が、観察しうる最初期から幼児の母語知識を制約していることを実証的に示してきた。現在のミニマリストプログラム(MP)においては、これまでUG固有と考えられてきた属性の大部分を一般的自然法則から導くことが試みられている。理論的研究の関心がUGの最小化へと変化するのに伴い、母語獲得研究は勢いを失いつつある。しかし、これまでUG固有と考えられていた属性が、MPの枠組みの中で最小化されたUGと一般的自然法則の相互作用から導かれることになったとしても、その属性が生得的な源から生じているという点には変化がない。したがって、生得的な属性の早期発現に関する研究は、MPの枠組みに基づく理論的研究の成果を踏まえながら、これまで以上に活発に行われることが期待される。 本研究は、この背景を踏まえ、MPでの統語分析を基に、英語獲得初期における幼児の句構造の性質を明らかにすることを目的としている。平成26年度には研究成果を以下の論集の一部として出版した。 藤田・福井・遊佐・池内(編)『言語の設計・発達・進化』開拓社 本論文では、英語獲得初期における主語の基底位置について再考した。理論的研究においては、主語は動詞句内に基底生成され、その後TPへと移動する、と仮定されている。この「動詞句内主語仮説」に対する英語獲得からの証拠としてDeprez & Pierce (1993)が議論した現象を取り上げ、その証拠としての妥当性に対し、Merchant (2006)による理論的研究の成果に基づいて批判を加えた。次に、Chomsky (2012)によるyes/no疑問文の理論的分析に基づいて英語獲得初期におけるyes/no疑問文の調査を行い、幼児英語においてもやはり主語が動詞句内に基底生成されていることを示す新たな証拠を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の成果については、平成25年度中に学会発表を実施し、平成26年度には日本語の論文として出版するに至っている。また、今年度には、関連するデータをさらに深く分析し、その成果を含めた英語の論文を現在執筆中であり、Routledgeから出版される論集の一部として出版予定である。したがって、平成27年度に予定していた成果発表の一部をすでに実施することができているため、当初の計画以上に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、最終年度のため、これまでに得られた成果をまとめた英語の論文を執筆し、出版する。また、本研究において研究対象としているyes/no疑問文の獲得から研究対象の範囲を広げ、wh疑問文の獲得についても分析を進める。さらに、これらの成果を含めた母語獲得に関する教科書を執筆し、成果を一般の人々に対しても広く公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも早く研究成果が得られたため、海外での学会発表(ポスター発表)を行うために前倒し支払いを請求したが、出発前日に同じ所属の教員が急死し、その授業等への対応を行うために学会への出張をキャンセルせざるを得なかった。学会でのポスター発表については、共著者が対応してくれたため、無事に実施することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
助成金は、最終年度の論文執筆に関わる研究打ち合わせ・学会への出張・文具等の購入に使用する。
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