本年度は,課題テーマ全体に係わる現象として、当初の予定とは異なるが、前年度との関連から、その延長線として「where節」および「ウチニ」構文を取り上げた。これらの構文は、「場所」と「現場性」に関わる現象であり,主要なテーマである,「主体性』「知覚」「存在」と密接に関連するものである。 ここでwhereとの関連でいう「場所」とは、地理的空間的意味のことではなく、「場」とか「場面」という意味である(西田哲学の「場所」)。(1)のようなwhere節を問題にしている. (1) a. We caught him where he was opening the safe. b. We surprised him where he was setting his trap. 管見によれば,このようなwhere節は,これまで取り上げられたことはなかったと思われる。つまり、主節の目的語とNPとwhere節との間に、ある状況のもとで、叙述関係 (predication)が成立し、その結果として,日本語の「ところ」節と同様にひとつの事態を表すことになる、というものである. 次に「「夏休みのウチニ/アイダニ」などに見られるように、両構文とも何らかの出来事の「間」が問題とされる構文であるが、始めと終わりとを前もって設定し、その2つの点の「あいだ」を問題にするのかどうかの違いである。「ウチニ」構文では言語主体は状況の中に身をおいて,いわば「行為的」に参加しているのである。このテーマで首尾一貫しているのは、出来事の成り行きを対象的に、つまり出来上がったものとして見るのではなく、言語主体(話し手であったり文主語であったりする)はその状況に立ち会って、状況の変化、推移に伴って一緒に動くという観点からアプローチすることである。where節であれ、「ウチニ」構文であれ、ここでのアプローチに違いはない。
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