研究課題/領域番号 |
25370558
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
岩田 彩志 関西大学, 文学部, 教授 (50232682)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | way表現 / 語彙・構文アプローチ / 語彙意味論 / 構文理論 / 項構造 |
研究実績の概要 |
これまでのway表現の先行研究(Goldberg 1995)において、主語は自らの力で動くものでなければならないとされてきた。しかしこの一般化で説明できないのがfind one’s wayである(About half its sacred textiles had been smuggled out of Bolivia and had found their way into American collections)。Goldberg (1995)はこれを語彙的な例外として片づけているが、コーパスデータを基にして調べてみると以下のことが判明した。 まずfind one’s wayには二種類ある。 一つ目はvolitionタイプで、主語は意図的に自分の進む経路を少しずつ見つけながら、進んで行く(He was trying to find his way back)。このタイプは他の多くのway表現と全く同じで、動詞事象が移動事象を「可能にする(enabling)」関係にある、と分析できる。 二番目は、’end-up-with’タイプで、無生物主語が自ら動いていないにもかかわらず、あるところにあるのが発見される、という意味を表す。これが例外的とされる用法である。しかし実は動詞findの性質から、このタイプの特性を導くことが可能である。Findはachievement verbであり、終着点のみを表す意味を持つからである。また幾つかの移動動詞は、無生物主語が、気が付いてみたらある場所に収まっていた、という意味を表すことが出来る(Some of the money went into the pockets of individuals)。find one’s wayの例外的特性は、これら二つの要因が絡み合った結果生じるものとして分析できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Goldberg (1995) におけるway構文の分析では、‘end-up-with’タイプを単に例外として片づけるしかなかった。しかしこのタイプの一見例外的に見える特性が、実は動詞findの特性から導き出せるということは、正に私がこれまで行ってきた「語彙・構文アプローチ」の主張を裏付けるものである。これまで扱ってきた現象(所格交替・結果表現)と同じく、way構文に対しても動詞の意味と構文の意味との関係を詳細に分析することにより、その本質を明らかに出来るという確信を強めてくれるものであり、非常に意義のある成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
Find one’s wayに関して、これまで単に例外とされてきたものが、実は単なる例外でないことを明らかに出来た。Way構文の分析はGoldberg (1995)以降、大きな進展がなく、ほぼ解明できることは尽くされたとの観があるが、実はまだまだ手つかずの箇所が多くある。Find one’s way以外にも、Goldberg (1995)の分析からすれば例外的と思えるway表現は存在するので、それらの現象に対しても引き続き同様の分析を行って、way構文の全体像を解明することにつながるような発見を積み重ねていきたいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
自分の研究課題に関連性が高く、至急購入したい図書が数冊あったが、この残額では足りないので次年度に回すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は以下の用途で使用する予定。まず、アメリカのウィスコンシン大学マディソン校で開催される第6回国際現代英語学会に出席して口頭発表を行うので、その出張旅費。次に研究に関連する図書の購入、およびデータ収集に欠かせないコーパスを使用するための契約料。さらに英語論文の論文校閲。
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