研究実績の概要 |
これまでの先行研究(Goldberg 1995)に従えば、way表現は[主語+動詞+所有代名詞+way+経路句]という形式を必ず備えていなければならない筈である。しかしBritish National Corpus やWordbank Corpusを使って検索してみると、pay one’s wayでは経路句無しの実例が見つかる(I can pay my way)。しかも単に例外として扱う訳にはいかない程、数が多い。BNCでは全92例中86例(93.5%)、Wordbankでは全124例中91例(73.4%)が経路句無しであった。 興味深いことに、これらの例は殆どが「(買い物等をして)経費を払う」という意味を表していることが判明した。つまり移動が関わらずに動詞事象だけの意味から成り立っていることになる。 ではway表現は基本的に移動表現である筈なのに、なぜこのようなことが可能になるのか?実は正にway表現を移動表現の一種とみなすことにより、その答えが得られた。移動様態動詞には、walkのように動詞が移動を含意するタイプと、rollのように動詞自体が移動を含意しないタイプがある。前者のタイプでは経路句を省略しても移動の意味は残る(He walked along the street/He walked)が、後者では経路句を省略すると移動の意味はなくなる(The ball rolled down the hill/The ball rolled)。通常のway表現は、walkタイプと同じく経路句を省略しても移動の意味が残る(She got up, elbowing her way, pushing past them)。しかしpay one’s wayがrollタイプと同じであるとすれば、経路句が無いと移動を表さないのは何もおかしいことでなくなる。
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