研究実績の概要 |
モダリティ(=心的態度)を表す英語法助動詞の特徴を語用論的・認知言語学的に考察した。とりわけ、Langackerのモダリティに対するアプローチを総括する中で、Langackerのモデルでは、詳細に論じられていない法助動詞の特徴を明らかにし、どのようなアプローチが妥当であるかを考察した。たとえば、言語行為的mayの本質を捉えるためには、「断言」(assertion)と「非断言」(non-assertion)(cf. Palmer 2001, 2003)との関連でモダリティ表現を捉える必要もあることを主張した。そのうえで、法助動詞を含む発話に関与する、認知、言語行為、捉え方などのコンテクストを「動機づけ」(mayの場合は、相手の先行発話や、常識や対話者間で共有される特定的な情報)の観点から明らかにした。そして、(i)科学文法(生成文法、認知言語学、機能文法、語用論)などの成果を積極的に取り入れ、今までばらばらに扱われてきた事実を統一的に説明する学習英文法、(ii)公式的・機械的にひたすら暗記させるのではなく、意味や認知メカニズムから説明することにより、学習者を納得させる学習英文法、(iii)英語学習者に英語の仕組みの骨格を提示し、英語学習が効率よく、かつ、効果的に進むのを支援することを目標とした学習英文法(岡田2001: 6-7, 2012: 119, 大津(編)2012)の線に沿って、上述の分析を反映させた英語法助動詞の特徴づけを提出した。 また、モダリティ研究をどのようにして、英語学習者の論理的思考に基いた英語運用の向上、状況に応じた適切な英語表現の産出などに繋げるかに関する考察も行った。高校生用の教科書で紹介されている(疑似)法助動詞の特徴を整理し、どのようなトピックをどのように高等教育で導入するのが妥当であるのかを検証した。
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