研究実績の概要 |
最終年度である今年度は、硬口蓋歯茎を調音点に持つ英語の4つの阻害音が硬口蓋化された /t, d, s, z/ であるとして音節構造との関係を論じた “Palato-alveolar obstruents and syllable structure in English” を執筆した。同論文は、近々完成の予定である。 また、音節構造と形態構造の関わりについて、英語の形容詞の比較級における -er 形と more 形の選択の問題を考察し、この選択にフット構造に関する音韻的条件が関わっていることを明らかにした。また、それに付随して、母音で始まり強勢を持たない接尾辞を見た場合、名詞化接尾辞は -age, -er, -ist, -or, -y など基体の強勢に中立的なものが多いのに対して形容詞化接尾辞は -al, -ant, -ar, -ic, -ive, -ous など強勢の移動を許すものが多く、その結果、名詞では第2音節が重いにもかかわらず語頭に主強勢を持つ3音節語が生じるが(columnist, monarchist, monarchy, parentage)、形容詞では重い第2音節に主強勢が置かれる(columnar, monarchal, monarchic, parental)ことを指摘した。この成果は「英語の形容詞の比較級の語形とフット構造について」(『音韻研究の新展開―窪薗晴夫教授還暦記念論文集』、田中真一他編(2017)、開拓社)において発表した。 さらに、英語における子音の重さとソノリティーの関係について予備的な考察を行い、「英語における子音の重さについて」(『現代音韻論の動向―日本音韻論学会20周年記念論文集』、日本音韻論学会編(2016)、開拓社)において発表した。この問題については平成29年度からの新しい研究課題(17K02832)で引き続き取り組む。
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