研究課題/領域番号 |
25370568
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
毛利 史生 福岡大学, 人文学部, 准教授 (40341490)
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研究分担者 |
Robert Cvitkovic 東海大学, 公私立大学の部局等, 講師 (00412627)
鄭 磊 福岡大学, 公私立大学の部局等, 講師 (40614475)
Howe S・M 福岡大学, 人文学部, 准教授 (90461491)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 比較級構文 / L1転移 |
研究実績の概要 |
日本語と中国語の比較級構文の理論構築に従事した。研究成果は2017年2月にシンガポール国立大学で開催されたGLOW in Asiaにて "Degree Nominals in Japanese and Chinese Compararives"のタイトルで発表した。内容としては、日中両言語において、(比較対象が)節タイプの比較級構文は存在しないことを主張した。一見節タイプなものは、名詞句削除(Sudo 2016)が適用された句構造を成していることを述べた。 研究発表はMohri and Tei (2017)としてProceedingsに掲載されている。Mohri and Teiの理論研究で提示した日本語および中国語の比較級構文の演算操作を仮定した上で、それらの言語を母国語とする英語学習者の比較級構文の習得状況を調査した。調査方法は、提示した文に対して真偽値で回答するものである。結果、1)日本人英語学習者、中国語英語話者いずれも非事象的節比較級構文に対して正答率が際立って低いこと、2)日本人英語学習者は、「程度」を比較するケースと「量」を比較するケースで正答率の有意差が確認されなかった。さらに、3)中国人学習者は、節比較級構文の正答率に(構文タイプによって)ばらつきが観察された。 1)の事実は、Mohri and Teiで想定した中国語と日本語の文法知識からのL1転移の影響と見て取ることができるが、2)および3)の事実に関しては、母国語からの負の転移の影響は観察されていない。なぜ観察されないのか検証しつつ、またMohri and Teiの若干の軌道修正をすべきか、現在、考察中である。今回の実験は、福岡大学『人文論業 No.195』に掲載。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本人英語学習者と中国人英語学習者の比較級構文の習熟度調査を実施したが、想定した結果を得ることができなかった。L1転移の影響が表れると予想した構文に、転移の思しき有意なデータを得ることができなかった。様々な外部要因を考慮しつつ、当該構文で作用している(と想定した)演算操作の見直しも検討する必要にせまられた。
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今後の研究の推進方策 |
比較級構文の再考を行う。昨年度の研究において、日本人英語学習者は、「程度」を比較するケースと「量」を比較するケースで正答率の有意差が確認されなかった。日本語比較級構文の演算操作が英語比較級構文の解釈判断に用いられていると仮定すると、「量」を比較するケースに高い許容性を示すことが予測された。が、実験データではそれを証明することができなかった。母国語の演算操作モデルを再考すると同時に、学習者が比較級構文を容認する様々な外的要因を検証していきたい。 同時に、英語の複数性と総称性の文法判断に関する実験を行っていく。日本語には強制的な複数形態素が存在しない。随意的な「たち」形態素を用いた複数名詞や、「犬猫」「花々」、「人々」など、類似名詞や同一名詞を重ねる複数名詞が存在するが、英語の複数名詞とは属性が異なる。偶発的解釈に現れる日本語、中国語の(裸)名詞は、種の実例や外延であるという先行研究(Carlson 1977、 Dayal2013)に基づき、日本語、中国語の偶発的コンテキストや総称文の裸名詞の解釈についてその導出過程を検討する。その上で、上記言語を母国語する英語学習者の総称表現や複数性に関する習熟調査を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会で研究協力者と研究成果を予定していたものの、受理されず計画倒れとなった。また、統計に関するセミナー開催も講師の都合により中止となった。その分の予算が執行できず次年度繰越となった。 再度、研究成果を見直し、国際学会での研究発表を目指す。また、国内の研究者と本学にてワークショップを開催したい。そのための予算執行を予定しいる。
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