研究課題/領域番号 |
25370569
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
柴崎 礼士郎 明治大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50412854)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歴史言語学 / 談話分析 / 構文 / 文法化 / 語用論 / 英語 / 言語類型論 / 国際研究者交流(日本:ポーランド:ドイツ) |
研究概要 |
まず現在の研究状況であるが、研究実施計画に記載の通り、あるいは、それ以上に良い進捗状況と判断できる。完成年度に予定していた国際ワークショップを平成26年度に実施でき(採択済)、更に、同研究成果を英文一括論文として投稿する準備も進行中である。 平成25年度に実施した研究発表は研究実施計画通りであるが、一方で、申請者の刊行済論文や研究発表に対する国内外の研究者からのコメント等を含め、常に他言語(多言語)との対照研究や発展的研究への可能性を探り続けることができた。その理由は、本研究が平成22年度から平成24年度まで採択された科学研究費若手研究(B)「主要部標示型から依存部標示型へ-歴史言語類型論から見た英語人称代名詞の特異性-」(課題番号22720194)の延長線上に位置しているためである。 こうした学術交流を通して以下の点に気付くことができた。申請時点での本研究の中心は、英語史における人称代名詞、繋辞、否定辞等の縮約現象を、通言語的視点である「主要部」と「依存部」の枠組みで再解釈することであった。つまり、言語の形式面を考察することに重点が置かれていた。しかし、国内外の研究者との意見交換を経て、形式上の「主要部」と「依存部」を拡大解釈して、情報上の「主要部」と「周辺部」という視点で言語現象を捉えることの可能性に気付いた。情報は言語化され、そのまま提示される訳ではない。主要な情報を対話者に誤解の無いよう伝えるために、情報連鎖の周辺部に位置する言語表現がいつの時代にも発達している。そして、周辺部で用いられる繋ぎ役を担う表現群は、口語性の高いジャンルでは縮約化の方向で変化を被っている事実もある。 こうした形式と情報を融合させた事例研究として、平成25年度には二編の論文を上梓し刊行確定となった。今後は、論文に対する識者からの反応に耳を傾けつつ、本研究課題の可能性を更に探っていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までの進捗状況は「当初の計画以上に進展」しており、その理由は以下の通りである。 第一の理由は、完成年度に予定していた国際ワークショップを一年早め、平成26年度に実施できることである。申請当初は国際学会でのワークショップを予定していたが、今回は国内学会の一つ「日本英語学会第32回大会」(於:学習院大学、2014年11月)での国際ワークショップを実施する(採択済)。国際的に活躍する若手中堅の研究者を日本国内へ招聘して学会全体の活性化を図ること、および、日本国内の研究を招聘者に理解してもらい、意見交換の場となることを狙いとしている。尚、2人の連携研究者も上述の国際ワークショップで研究発表を行う。 第二の理由は、研究発表および研究論文の刊行も順調に進んでいる点である。平成25年度には3回の研究発表(国内1、海外2)が採択済であり、掲載確定論文は2件、最終審査中論文4件となっている。 第三の理由は、他言語(多言語)研究への可能性が開けた点である。英語史における言語現象を研究することが本研究課題の目的である。ところが、関連現象を研究中のドイツの研究者とも交流が始まり、英語とドイツ語における対照言語学研究へ発展し、上述の国際ワークショップには同研究者による研究発表も含まれている。更に、フランス語や日本語の関連現象の分析可能性も検討中であり、本研究課題の妥当性が裏付けられる展開になっている。尚、この第三の理由は「今後の研究の推進方策」とも密接に関わってくる。 以上の理由から、本研究課題は「当初の計画以上に進展」していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」の箇所で述べた通り、申請当初よりも早くに国際ワークショップが実施でき、更に、他言語(多言語)との対照研究の可能性が見えてきている。この2点を、今後どのように発展的研究へと繋げられるかが肝要である。 まず、本年度実施の国際ワークショップでの研究発表は一括論文として投稿する予定である。投稿先は検討中であるが、本ワークショップの目的から判断して日本国内の有力学会誌を考えている。尚、海外の研究者への発信も主目的であるため、研究グループ内では英文論文として刊行することで合意している。 他言語(多言語)との対照研究については以下のような方向で考えている。一つは、本研究課題をより広く浸透させるために研究成果を日本語による論文集として刊行し、国内の研究者からもフィードバックを仰ぐことである。研究グループ以外からも論文を募集し、今後の発展的研究のための礎にもする。 最後に本研究課題の方向性について述べる。本研究課題は「英語史に見る主要部と依存部の競合関係について」であり、申請当初の研究の中心は形態統語上の「主要部」と「依存部」であった。しかし、様々なデータ分析を通して、あるいは、諸学会での意見交換を通して新たな側面に気付いた。つまり、形式上の「主要部」と「依存部」は、情報面からも広義に「主要部」と「周辺部」と再解釈できるという点である。特定の談話上で用いられる表現は固定化あるいは構文化して、史的に関連構文を生み出し続ける可能性が高い。こうした固定化した表現群は、情報面からは周辺的であり、主要情報のやり取りの潤滑油として機能している。このように、形式面での「主要部」と「依存部」の分析と並行して、情報面での「主要部」と「周辺部」の考察も進めることで研究課題の幅を広げ、一方で、個々の事例研究の深化を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
端数が生じてしまったため、僅かな金額と言うこともあり、その分は次年度へ繰り越すこととした。 上掲理由によるため、研究計画上、本質的な問題は生じていない。
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