研究課題/領域番号 |
25370571
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 勢紀子 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (20205925)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本語学習者 / 文語文 / 古典学習 / 読解教材 / e-learning |
研究実績の概要 |
1.日本語文語文読解教育に関する先行研究を調べ、関連図書、資料を収集した。 2.平成25年度の予備調査の結果をふまえて、調査項目や調査方法の見直しを行ない、本調査のインタビュー調査基本質問項目およびアンケート票を作成した。その上で、国内外で相手方の同意等を得た上でインタビュー調査およびアンケート調査を実施した。海外での調査は、中国(上海、同済大学)およびヨーロッパ日本研究協会(EAJS)が開催されたスロベニア(リュブリャナ、リュブリャナ大学)で実施した(平成26年5月17日、同8月28日~29日)。国内での調査は、東北大学、早稲田大学等で数度にわたり実施した。調査の結果を文字化し、データ分析を行ない、国内外における日本語文語文教育の実態および今後の教材開発に関する検討課題を明らかにした。 3.インタビュー調査およびアンケート調査の結果のうち、学習者が文語文学習上困難を感じている点を取り上げ、漢字系学習者(中国、台湾の学習者)と非漢字系学習者という対象別にまとめ、研究代表者の所属機関の紀要および関連学会誌上で発表した。 4.文語文読解教育のシラバス開発のため、平成25年度に続き、古典入門の授業を開講した(東北大学「外国人留学生等特別課程」における「上級日本文化演習(古典入門)」、平成26年10月~平成27年1月)。前年度の授業の結果をふまえ、対象とするテキストの分量を絞って文法学習の機会を増やし、学習者が独力で文語文が読めるようになることを目指して基礎読解力の育成を行なった。 5.国内外研究組織メンバーが集まる機会を設け、日本語文語文読解教育についての知見を共有する研究会を開催した。台湾、韓国、米国の文語文教育従事者により、各地域の文語文教育事情についての報告が行なわれた。同時に今後の研究計画について検討した(平成27年1月26日、於東北大学)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画では、当初、インタビュー調査基本項目およびアンケート調査票の確定、国内外における調査の実施(海外は韓国、中国、スロベニアでの実施)、調査結果の分析、研究成果の発表、古典入門の授業開講を通じてのシラバス開発を予定していた。 現在まで、それらをほぼ計画どおりに達成することができ、国内外における日本語文語文教育の実態およびニーズを明らかにすることができた。韓国での調査は実施しなかったが、これは平成27年1月に実施した予備調査で既に韓国の研究者を対象に調査を行なっていること、科研メンバーによる文語文教育についての研究会を国内で行なった際に韓国から研究協力者を招き韓国での教育事情について報告いただいていることで補うことができたと考えている。 研究成果とは別に、平成26年度に達成されたことで特記すべきこととしては、インタビュー調査およびアンケート調査の実施を通じて、日本語文語文教育を専門とする国内外の多数の研究者とのつながりができ、文語文教材開発についてのネットワークが形成されたことがある。特に中国、台湾、米国、イタリア、英国、オランダ、ノルウェー等における文語文教育の第一人者と知り合い、そのうち少なくとも3名から今後も継続的に研究協力が得られる見込みであることは、今後の本研究課題の推進において大きな力になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究組織については、初年度は研究代表者、連携研究者(3名)、研究協力者8名の12名であったが、今後は今年度新たに参加した研究協力者3名(台湾、米国、イタリア)を加えて研究を推進する予定である。 平成27年度には、まず、平成26年度の調査の結果のうち教材開発への要望の部分をまとめ、関連学会で発表する。また、平成26年度1月の研究会での海外協力者からの報告をもとに、関連学会誌上で、海外の日本語文語文教育事情について共同執筆による発表を行なうことを企画している。同時に、当初からの計画どおり、これまでの調査結果をふまえて、日本語文語文法導入の望ましい方法を検討し、それに即したシラバスを考案していく。開発した教材(案)を用いて、古典読解や文語文読解の授業を東北大学において試行する。可能であれば、東北大学以外の教育機関でも部分的な試行を行なう。さらに、考案したシラバス、教材の試用結果について、関連学会や研究メンバー所属機関の紀要等で発表する。その他、研究メンバーによる研究会を8月に開催し、文語文教育に関する研究成果や情報を共有し教材開発について討議する機会としたい。この研究会は公開セミナーとして開催する計画である。 最終年度である平成28年度には、試行結果をふまえて、考案したシラバスや教材の見直しを行い、教材を既存のe-learningプラットフォーム(東北大学ASIST)に載せてウェブ上で公開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことにともない発生した未使用額であり、平成27年度請求額とあわせ、平成27年度 の研究遂行に使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の教材開発および国内外の研究者を招いてのパネル等開催に使用する予定である。
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