研究課題/領域番号 |
25370572
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
才田 いずみ 東北大学, 文学研究科, 教授 (20186919)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 接触場面 / コミュニケーション / 雑談 / 会話教材 / ターンテイキング |
研究概要 |
本研究の目的は,日本語学習者が日本語母語話者と日本語で相互交渉を行う接触場面や日本語非母語話者同士で日本語コミュニケーションを行う第三者接触場面において,相手に違和感を与えない円滑な会話参加ができるよう,有効な支援を提供することにある。 平成25年度計画では,母語話者・非母語話者について男女それぞれ2名ずつの協力者を得て,3名による接触場面会話を中心に,2名による会話や4名による会話も採録しようと考えていたが,気楽に雑談を交わせる関係の協力者を8名確保することが難しかったことと,何よりもまず接触場面における自然な雑談会話データをで得ることを最優先し,女性3名による会話とすることにした。参加者は,日本語母語話者1名,中国人1名,台湾人1名である。 会話採集にあたっては,スタートする話題のみ指示した。そのため,会話開始とその直後の部分は「自然」な流れであるとは言えない。しかし,会話をどう展開するかなどの指示は与えず会話参加者に任せたので,その次の話段からは,ほぼ自然な会話が展開されたと言えよう。会話はすべてICレコーダとビデオ撮影によって記録した。今回は,この方法での雑談データの収集が可能かどうかをチェックすることも1つの目的であったが,ほぼ,問題なく雑談会話データが収集できることが確認できたと考えている。 会話データの文字化作業については,教材で提示するトランスクリプションと,会話分析を行うための書き起こしデータ作成があり,後者については,広く用いられている記述方法に複数の種類があるので,どの方式を選択するか,実際に書き起こしをしながら比較検討を行っている。 これに並行して,採集した雑談データから教材に利用できそうな候補場面の選定を行っている。教材として活用可能なクオリティは映像・音声ともに十分に確保できており,映像リソース作成については一部計画を前倒した結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の研究は,遅れている部分と計画を先取りした部分があるので,おおむね順調とも言えるが,遅れている部分があることを重視し「やや遅れている」と評価することにした。 遅れている点:データの処理・分析 接触場面における自然な雑談会話を収集したかったので,会話の参加者の選定が重要な要件となった。参加者間に気軽な雑談を交わせる人間関係が形成されていることが必須であったことと,会話参加者である日本語学習者が受身の立場で会話に加わったのでは接触場面の雑談として適切なデータにならないと考えたため,単に高い日本語能力があればよしとするのではなく,円滑に会話を弾ませる能力のある学習者を選定する必要があった。そのため,相互関係が醸成され,日本語会話力の見極めがある程度つく時期までデータ収集を待つことになったので,データの書き起こしと分析処理作業も予定より開始が遅くなり,25年度中に終えることができなかった。 進んでいる点:ビデオ映像データ作成 会話採集では,話が弾み,トータルで1時間以上のデータ収録がなされた。会話自体,非常に自然な雑談であった上,画質のよいビデオカメラでの撮影と音声収録を行ったので,提示事例として教材に使える可能性のある部分が多々ある。まだすべての分析を終えていないので,断言はできないが,現時点では,改めて提示用の会話を撮影しなくてもよいと考えている。これは,平成26年度の計画の一部を前倒しで終了したことになり,その点では,計画よりも早く進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
計画変更の必要性は特に感じていないが,平成26年度はデータの書き起こしトレーニングを実施して要員を確保し,今後収集する第三者接触場面と母語話者場面のデータの処理が滞らないような体制をとりたいと考えている。
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