研究課題/領域番号 |
25370575
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
鎌田 美千子 宇都宮大学, 留学生・国際交流センター, 准教授 (40372346)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 学習支援 / 文章理解 / パラフレーズ / 書き換え / リライト / 背景知識 / 教科書 |
研究概要 |
本研究は、JSL(Japanese as a Second Language)児童生徒への学習支援のあり方とその方法をパラフレーズの面から明らかにすることを目的としたものである。取り出し指導終了後の「口頭での説明は理解できるが、教科書の文章が理解できない」といった段階に焦点を当て、文章理解を促すパラフレーズと具体的な学習支援方法の提示を目指す。この研究目的を達成するために、平成25年度は以下の三点に取り組んだ。 第一に、JSL児童生徒への学習支援にパラフレーズを役立てるための理論的な枠組みをバイリンガル教育及び文章理解研究の見地から検討した。文章理解には、個々の言語表現の理解(ボトムアップ処理)の他に、文脈や読み手の既有知識(トップダウン処理)との関連が大きいという先行研究の知見に基づき、従来のリライト手法に見られる問題点を整理した。 第二に、「テキストの学習(learning of text)」と「テキストからの学習(learning from text)」を区別した上で、後者に関係する社会科と理科の小学校検定教科書の文章に関する定性的分析を行った。具体的には、教科書の文章で前提とされている経験や知識が必ずしもJSL児童生徒にとって身近ではないと思われる記述を抽出し、類型化を行った。この類型化は、次年度の中学校検定教科書の分析結果とあわせて最終的に学習支援方法の提示に活かす予定である。 第三に、日本語母語話者によるリライト、記述式アンケート、フォローアップ・インタビューの分析を通して、経験があまりない段階における困難点を考察した。その結果、リライト作成では、個々の言語表現を重視する一方で、文章の全体的な理解に関わる背景知識に関しては、認識の有無に関わらず、反映されにくいことがわかった。 本年度の研究成果は、次年度以降、関連学会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、関連研究を概観した上で本研究の理論的枠組みを構築するとともに、さらに小学校検定教科書分析とリライト分析を進めることができた。研究初年度であったため、研究成果を発表するまでには至らなかったが、次年度の異文化間教育学会第35回大会(2014年6月7-8日)及びInternational Conference on Japanese Language Education 2014(2014年7月11-12日)で発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
概ね順調に進んでいることから、今後の研究の発展を考慮して、平成25年度後半に、経験があまりない日本語母語話者が書いたリライトの分析を新たに加えた。このことにより、より多面的な検討が可能になったと思われる。 申請時には、小・中学校教科書分析を終えてから学習支援方法を検討することを計画していたが、今年度の進捗をふまえ、双方を並行して行うこととした。このことにより、入念な検討が相互に可能となり、より具体的な方法論の提示が見込まれる。
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