研究課題/領域番号 |
25370580
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
鈴木 美加 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 准教授 (90226556)
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研究分担者 |
熊田 道子 東京外国語大学, 留学生日本語教育センター, 研究員 (20711683)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 多読 / Extensive Reading / 中級 / 自立的な読み / 読解中の視線 / 多読授業 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本語学習における多読(Extensive Reading)の効果を実証的に明らかにすることを目的に、①学習者の読解中の視線と内容理解度の測定(学期開始期・終了時)、②多読授業(13回)における学習者の反応の変化の記録、③多読中の学習者の発話(think aloud)の記録(学期中期・終了期)について、①は実験、②と③は観察法により、データを記録し、分析を行った。対象者は、アカデミックな日本語の運用能力を伸ばすことを目的とする学習者で中級レベル(中級初め、中級半ば)とした。 その結果、多読授業の回が進むととともに変化する学習者の特徴を明らかにすることができた。具体的には、第一に、多読開始期(学期開始期)には個々の要素(文字、語)の処理に比重が置かれ、逐次読みの傾向が顕著であるが、学期終了期には文章内容の意味の処理が中心となることが、視線の記録、多読授業での学習者の反応(教師への質問等)、多読中の学習者の発話、の3種のデータから示された。このことは、学習者が多読を継続することにより、主に語の処理に重きを置いた「語彙傾注型」の読みから、より内容に意識を向ける「内容傾注型」の読みに変化するということを示す者である。この変化は、中級初め、あるいは、半ばのレベルにおいて、ほぼ共通している傾向が認められた。第二に、上記②、③の調査から、学習者が進んで自ら読む対象を選択し、読み、内容をまとめ、クラスで情報共有をする多読の活動は、情意面で学習への動機づけとなり、自立的な読みにつながっていることが示された。 これらの結果を踏まえ、多読の活動と学習者の内的な成長(読解面、動機づけ等)を日本語学習に位置づけ、活動開始期からの変化を、多読における1つの道筋(モデル)として提示することができた。
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