この研究は、非日本語環境で学んだ日本語学習者の言語行動のバリエーションに対する認知的視点および獲得の過程を探り、記述することを目的としたものである。 平成27年度は、以下の3点を行った。 (1)収集した日常談話データを、対話の維持という観点から分析した。来日時と帰国時の談話にどのような変化が見られるかを観察した結果、中級レベルの学習者の来日時談話では比較的単調な[情報要求→情報提供]の連鎖であったのが、帰国時談話では「報告(語り)」や「質問(意見要求)」から始まる連鎖や、驚きや共感、確認などのバリエーションが見られ、また、対話の維持に積極的に働きかける主体的な行動が多くなるなど、対話を維持するための言語行動においてバリエーションの広がりが確認された。 (2)国際学会において、(1)の分析結果を発表し、海外において日本語指導にあたる研究者等の検証を受けた。 (3)協力者へのインタビュー・データを分析し、来日後の文体選択に関する意識について探索・検討した。
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