研究課題/領域番号 |
25370588
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
上田 崇仁 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (90326421)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ラジオ放送 / 植民地朝鮮 / 新聞 / ラジオプログラム / 学校教育 / 社会教育 / 内地中継放送 |
研究実績の概要 |
2015年度は、資料収集と手元にある資料の整理分析を中心に研究を進めた。 基本となる資料は、植民地期の朝鮮半島で継続発行された「毎日新報」、「朝日新聞」の「朝鮮版」のマイクロフィルム、ラジオ講座のテキスト類である。 「毎日新報」のラジオプログラム欄を確認していく作業を進めたが、別の科研でも触れた新聞連載の「国語講座」の存在を再確認し、その内容を詳細に調べていく必要性があると判断した。加えて、時代が移る中で日本語で記述されている記事が増えていく傾向があることは予想がつくことではあるが、朝鮮語の記事はどういった基準で選択されているのか、ということも事象の背景として押さえていく必要があることを認識するに至った。ラジオプログラム欄に示されている「国語(日本語)」教育のプログラムだが、今回の調査で、それと明記されてはいないが内地の放送の中継ではないかと思われるものが含まれていることに気づいた。残念なことに、現段階での調査では内地の放送の中継かどうかの判断が資料不足でできていない。仮に内地からの中継ということであれば、朝鮮語放送の中での内地中継放送の意味を検討する必要が出てくるとともに、朝鮮語放送の中での「国語」のプログラムが、初級レベルから応用レベルまで結果としてそろっていたことを示しており、プログラムの放送内容のより詳細な発掘が必要だという結論に至った。加えて、児童生徒対象のものと一般向けのものを区別することはプログラム欄からだけでは困難を伴うが、可能な限り整理したうえで、学校教育や社会教育の中での「国語」教育との関連を追うことも必要だと考えた。 以上のように、2015年度は残りの研究期間における調査研究の方向性と課題の洗い出しを大まかに終えることが中心となった。 また、この研究成果の一部は、『増補改訂 戦争ラジオ記憶』の「第4章 ラジオを利用した朝鮮の「国語」教育」に記述した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研では広くアジア一帯をフィールドとして、戦前戦中の日本のメディアを利用した「国語(日本語)」教育について研究することを目的としているが、開始以来、本務校のプロジェクト等の担当もあり、当初想定していたエフォート通りの時間を割くことが非常に困難であったために広範囲への調査出張が行えていなかった。その意味では、予定通りには進んでいない。しかしながら、そういった事情から手持ちの資料を丁寧に見ていくことができたために、研究実績の概要でも述べたように、今後の方向性と課題とを明確に打ち出すことができた。これは、2016年度からの研究を進めるにあたって、ぶれることなく、確実に研究を進める礎となったと認識し、「おおむね順調に進展している」という評価をくだした。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画では、台湾、中国、タイ、インドネシア、シンガポールなど、アジアの広い領域を調査していくことを想定していた。現地の状況を把握し、ラジオをはじめとしたメディアの状況を調査したうえでの現地調査が必要との認識であった。そのため、本務校のプロジェクトに時間が割かれる中、現地調査のための準備がほとんど進まず、これまで調査を進めてきた朝鮮の資料を詳細に見ていくほかない状況であった。そこで、研究をより進めていくために、地域を資料の整っている朝鮮に絞ることで効率を挙げたいと考える。朝鮮での事例をより明らかにする作業を終えた後で広げていくという手法を取りたいと考えている。その理由は、朝鮮におけるラジオ講座のテキストの収集が、本科研以前の科研の研究期間を含めても1冊しか発見できていないという資料的な問題にある。研究に協力してくれる人材のある韓国で資料の収集と分析を行うことで、他の地域の状況との比較をしていくことが、本科研の基盤となっている「日本語教育におけるメディアの役割」を明らかにすることに通じるもっとも適切な方法だと考えたためである。 そこで、2016年度は、韓国をフィールドとした調査を複数回行う。これは、韓国の研究者との協力、助力を得つつ、資料の収集や当時を知る方々へのインタビューなどを行える可能性が高いためである。また、日常的には、手持ちの資料である「毎日新報」のラジオプログラム欄の分析を詳細に進め、内地のラジオプログラム欄との比較検討を通じて、中継であったのか、朝鮮独自の放送であったのかを確認していく作業を行いたい。 以上のように、これまでの研究期間をかけて調べてきたものを基盤として、地域の限定と、資料の限定、調査項目の明確化を行うことで今後の研究をより効率的に進めることができると考えている。
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備考 |
更新作業がストップしていますが、ここで公開する予定です。
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