当初、広く東アジア全体を対象とした資料収集と調査の分析を考えていたが、代表者のスケジュールがあわず、朝鮮半島に絞った資料収集と調査、国内における資料収集と調査、中華人民共和国における調査協力者の獲得、を進めた。 最終年度の成果としては、ラジオ講座に使用されたテキストの分析と植民地における学校教育において使用された教科書の分析の比較対象作業があげられる。従来、ラジオ講座に使用されたテキストについては、その放送された地域によって、教育内容の異なりがあることを指摘してきたが、それはあくまでも「シラバス」という視点にのっとって行ったものであった。今年度の比較研究を進めていくうちに、扱われている話題や取り上げられている語彙に特徴があるのではないか、という問題意識を持つに至った。ここでいう特徴とは、地域や学習者の年代、職業により教育する内容が語彙レベル、日本社会、日本文化の話題において異なりがあり、何らかの傾向が見えるのではないかということであった。 従来のこういった語彙や話題に関する研究は、日本の軍国主義的視点、皇国史観的な分析がもっぱらだったこともあり、先行研究に乏しい印象を受けた。 そこで、今後のテーマとして、計量言語学的手法で教科書や教材の分析を進め、植民地と内地、また、同じ地域であれば学ぶ人たちの年代の異なりなどがどのように反映しているのかを明らかにしていくことを考えた。また、成果としては十分ではないが、新聞掲載の「国語講座」のデータ収集がようやく資料整理を終え緒に就いたところである。 このように、本年度は、まとまった結果が示せなかった一方で、次につながる糸口が明らかになったといえる。
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