本研究は、「モニタリング」(会話参加者が会話中に内省的に行っている、自己と会話相手の言語行動に関する評価や判断)を明らかにすることである。昨年度は、学習者と日本人学生に対し依頼場面のロールプレイを実施して、双方から「モニタリング」のデータをとり、日本人学生が学習者の言語行動に対して感じた違和感を分析し考察した。 今年度は、同じデータについて、日本人学生が、学習者の言語行動に対してどのような配慮をしながら会話をしているかを分析し考察した。 日本人学生のモニタリングからは、学習者の言語行動に対してさまざまな配慮がなされていることがわかった。配慮には、1)学習者の日本語能力に対する「言語的な配慮」(日本人学生が依頼を引き受ける際に「しゃーないね」と言ってしまったあとで、学習者がわからないかもしれないと思って「あ、いいよ」と続ける)、2)会話が円滑に進むようにする「談話展開的な配慮」(学習者の応答が不適切で理解するのに困難があっても、話をつなげるために受け入れる)、3)相手の感情を考える「語用論的な配慮」(依頼を断る際に相手を傷つけないように、柔らかく聞こえるような発音のしかたをする(ためらいがちに言う))を認めることができた。
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